ジョージがマグル手品商品の脇わきのカーテンを引くと、そこには表より暗く、あまり混んでいない売り場があって、商品棚だなには地味なパッケージが並んでいた。
「最近、このまじめ路線ろせんを開発したばかりだ」フレッドが言った。「奇き妙みょうな経緯けいいだな……」
「まともな『盾たての呪じゅ文もん』ひとつできないやつが、驚くほど多いんだ。魔法省で働いている連中もだぜ」ジョージが言った。「そりゃ、ハリー、君に教えてもらわなかった連中だけどね」
「そうだとも……まあ、『盾の帽子ぼうし』はちょいと笑えると、俺たちはそう思ってた。こいつをかぶってから呪文をかけてみろって、誰だれかをけしかける。そしてその呪文が、かけたやつに撥はね返るときのそいつの顔を見るってわけさ。ところが魔法省は、補ほ助じょ職しょく員いん全員のためにこいつを五百個も注文したんだぜ! しかもまだ大量注文が入ってくる!」
「そこで俺たちは商品群を広げた。『盾のマント』、『盾の手袋』……」
「……そりゃ、『許ゆるされざる呪文』に対してはあんまり役には立たないけど、小から中程度の呪のろいや呪詛じゅそに関しては……」
「それから俺たちは考えた。『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』全般ぜんぱんをやってみようとね。なにしろ金かねのなる木だ」
ジョージは熱心に話し続けた。
「こいつはいけるぜ。ほら、『インスタント煙幕えんまく』。ペルーから輸ゆ入にゅうしてる。急いで逃げるときに便利なんだ」
「それに『おとり爆弾』なんか、棚に並べたとたん、足が生えたような売れ行きだ。ほら」
フレッドはへんてこりんな黒いラッパのような物を指差した。本当にこそこそ隠かくれようとしている。
「こいつをこっそり落とすと、逃げていって、見えないところで景気よく一発音を出してくれる。注意を逸そらす必要があるときにいい」
「便利だ」ハリーは感心した。
「取っとけよ」ジョージが一、二個捕まえてハリーに放ほうってよこした。