「さあ、どうぞ」フレッドが誇ほこらしげに言った。「どこにもない最高級『惚ほれ薬ぐすり』」
ジニーが疑わしげに片方の眉まゆを吊つり上げた。「効きくの?」
「もちろん、効くさ。一回で最大二十四時間。問題の男子の体重にもよる――」
「――それに女子の魅み力りょく度どにもよる」
突然、ジョージがそばに姿を現した。
「しかし、われらの妹には売らないのである」
ジョージが急に厳きびしい口調でつけ加えた。
「すでに約五人の男子が夢中であると聞き及んでいるからには――」
「ロンから何を聞いたか知らないけど、大嘘おおうそよ」
手を伸ばして棚たなから小さなピンクの壷つぼを取りながら、ジニーが冷静れいせいに言った。
「これは何?」
「『十秒で取れる保ほ証しょうつきニキビ取り』」フレッドが言った。「おできから黒ニキビまでよく効きく。しかし、話を逸そらすな。いまはディーン・トーマスという男子とデート中か否いなか?」
「そうよ」ジニーが言った。
「それに、この間見たときは、あの人、たしかに一人だった。五人じゃなかったわよ。こっちは何なの?」
ジニーは、キーキー甲高かんだかい音を出しながら籠かごの底を転がっている、ふわふわしたピンクや紫の毛玉の群れを指差していた。
「ピグミーパフ」ジョージが言った。「ミニチュアのパフスケインだ。いくら繁はん殖しょくさせても追いつかないぐらいだよ。それじゃ、マイケル・コーナーは?」
「捨てたわ。負けっぷりが悪いんだもの」
ジニーは籠の桟さんから指を一本入れ、ピグミーパフがそこにわいわい集まってくる様子を見つめていた。
「かーわいいっ!」
「連中は抱きしめたいほどかわいい。うん」フレッドが認めた。
「しかし、ボーイフレンドを渡り歩く速度が速はやすぎやしないか?」
ジニーは腰こしに両手を当ててフレッドを見た。ウィーズリーおばさんそっくりの睨にらみがきいたその顔に、フレッドがよくも怯ひるまないものだと、ハリーは驚いたくらいだ。
「よけいなお世話よ。それに、あなたにお願いしておきますけど」
商品をどっさり抱えてジョージのすぐそばに現れたロンに向かって、ジニーが言った。
「この二人に、わたしのことで、余計よけいなおしゃべりをしてくださいませんように!」