しかしハーマイオニーはもう、「マント」の下から出ていた。窓ガラスに姿を映うつして髪かみを撫なでつけ、ドアの鈴を鳴らし、ハーマイオニーはどんどん店に入っていった。ロンは慌あわてて「伸び耳」をドアの下から入れ、紐ひもの片方をハリーに渡した。
「こんにちは。いやな天気ですね?」
ハーマイオニーは明るくボージンに挨あい拶さつした。ボージンは返事もせず、胡う散さん臭くさそうにハーマイオニーを見た。ハーマイオニーは楽しそうに鼻歌はなうたを歌いながら、飾かざってある雑多ざったな商品の間をゆっくり歩いた。
「あのネックレス、売り物ですか?」
前面がガラスのショーケースのそばで立ち止まって、ハーマイオニーが聞いた。
「千五百ガリオン持っていればね」ボージンが冷たく答えた。
「ああ――ンー――ううん。それほどは持ってないわ」ハーマイオニーは歩き続けた。
「それで……このきれいな……えぇと……髑髏どくろは?」
「十六ガリオン」
「それじゃ、売り物なのね? べつに……誰だれかのために取り置きとかでは?」
ボージンは目を細めてハーマイオニーを見た。ハリーには、ずばりハーマイオニーの狙ねらいが何なのかがわかり、これはまずいぞと思った。ハーマイオニーも明らかに、見破られたと感じたらしく、急に慎しん重ちょうさをかなぐり捨てた。
「実は、あの――いまここにいた男の子、ドラコ・マルフォイだけど、あの、友達で、誕たん生じょう日びのプレゼントをあげたいの。でも、もう何かを予約してるなら、当然、同じ物はあげたくないので、それで……あの……」
かなり下手な作り話だと、ハリーは思った。どうやら、ボージンも同じ考えだった。
「失うせろ」ボージンが鋭するどく言った。
「出て失せろ!」
ハーマイオニーは二度目の失せろを待たずに、急いでドアに向かった。ボージンがすぐあとを追ってきた。鈴がまた鳴り、ボージンはハーマイオニーの背後でピシャリとドアを閉めて、「閉店」の看板かんばんを出した。
「まあね」ロンがハーマイオニーに、またマントを着せかけながら言った。
「やってみる価値はあったけど、君、ちょっとばればれで――」
「あーら、なら、次のときはあなたにやってみせていただきたいわ。秘ひ術じゅつ名めい人じんさま!」
ハーマイオニーがバシッと言った。
ロンとハーマイオニーは、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズに戻もどるまでずっと口げんかしていたが、店の前で口論こうろんをやめざるをえなかった。三人がいないことに、はっきり気づいた心配顔のウィーズリーおばさんとハグリッドをかわして、二人に気け取どられないように通り抜けなければならなかったからだ。いったん店に入ってから、ハリーはさっと「透とう明めいマント」を脱いで、バックパックに隠かくした。それから、ウィーズリーおばさんの詰問きつもんに答えている二人と一いっ緒しょになって、自分たちは店の奥にずっといた、おばさんはちゃんと探さなかったのだろうと言い張った。