キングズ・クロス駅で待っていたのは、陽気なハグリッドではなかった。その代わり、マグルの黒いスーツを着込んだ厳いかめしい髭面ひげづらの闇祓いが二人、車が停車するなり進み出て一行いっこうを挟はさみ、一言も口をきかずに駅の中まで行軍こうぐんさせた。
「早く、早く。柵さくの向こうに」
粛しゅく々しゅくとした効率こうりつのよさにちょっと面食らいながら、ウィーズリーおばさんが言った。
「ハリーが最初に行ったほうがいいわ。誰だれと一いっ緒しょに――?」
おばさんは問いかけるように闇祓いの一人を見た。その闇祓いは軽く頷うなずき、ハリーの上じょう腕わんをがっちりつかんで、九番線と十番線の間にある柵に誘いざなおうとした。
「自分で歩けるよ。せっかくだけど」
ハリーは苛立ちを顕あらわにしながら、つかまれた腕をぐいと振り解いた。黙だんまりの連つれを無視して、ハリーはカートを硬い柵さくに真っ向こうから突っ込んだ。次の瞬しゅん間かん、ハリーは九と四分の三番線に立ち、そこには、紅くれないのホグワーツ特急が、人混みの上に白い煙を吐はきながら停車していた。
すぐあとから、ハーマイオニーとウィーズリー一家がやって来た。強面こわもての闇やみ祓ばらいに相談もせず、ハリーはロンとハーマイオニーに向かって、空いているコンパートメントを探すのにプラットホームを歩くから、一いっ緒しょに来いよと合図した。
「だめなのよ、ハリー」ハーマイオニーが申しわけなさそうに言った。
「ロンも私も、まず監かん督生とくせいの車両に行って、それから少し通路のパトロールをしないといけないの」
「ああ、そうか。忘れてた」ハリーが言った。
「みんな、すぐに汽車に乗ったほうがいいわ。あと数分しかない」
ウィーズリーおばさんが腕時計を見ながら言った。
「じゃあ、ロン、楽しい学期をね……」
「ウィーズリーおじさん、ちょっとお話していいですか?」とっさにハリーは心を決めた。
「いいとも」
おじさんはちょっと驚いたような顔をしたが、ハリーのあとについて、みんなに声が聞こえないところまで行った。
ハリーは慎しん重ちょうに考え抜いて、誰だれかに話すのであれば、ウィーズリーおじさんがその人だという結論に達していた。第一に、おじさんは魔法省で働いているので、さらに調査をするにはいちばん好こう都つ合ごうな立場にあること。第二に、ウィーズリーおじさんなら怒って爆発する危険性があまりない、と考えたからだ。