「もう一つ、別のことですが、マダム・マルキンがあいつの左腕に触さわろうとしたとき、マルフォイがものすごく飛び上がるのを、僕たち見たんです。僕は、あいつが闇やみの印しるしを刻印こくいんされていると思います。父親の代わりに、あいつが死し喰くい人びとになったんだと思います」
ウィーズリー氏はギョッとしたようだった。少し間を置いて、おじさんが言った。
「ハリー、『例れいのあの人』が十六歳の子を受け入れるとは思えないが――」
「『例のあの人』が何をするかしないかなんて、本当にわかる人がいるんですか?」
ハリーが声を荒らげた。
「ごめんなさい、ウィーズリーおじさん。でも、調べてみる価値がありませんか? マルフォイが何かを修理したがっていて、そのためにボージンを脅す必要があるのなら、たぶんその何かは、闇の物とか、何か危険な物なのではないですか?」
「正直言って、ハリー、そうではないように思うよ」おじさんがゆっくりと言った。
「いいかい、ルシウス・マルフォイが逮捕たいほされたとき、我々は館やかたを強きょう制せい捜そう査さした。危険だと思われる物は、我々がすべて持ち帰った」
「何か見落としたんだと思います」ハリーが頑かたくなに言った。
「ああ、そうかもしれない」とおじさんは言ったが、ハリーは、おじさんが調子を合わせているだけだと感じた。
二人の背後で汽笛きてきが鳴った。ほとんど全員、汽車に乗り込み、ドアが閉まりかけていた。
「急いだほうがいい」おじさんが促うながし、おばさんの声が聞こえた。
「ハリー、早く!」
ハリーは急いで乗り込み、おじさんとおばさんがトランクを列車に乗せるのを手伝った。
「さあ、クリスマスには来るんですよ。ダンブルドアとすっかり段取りしてありますからね。すぐに会えますよ」
ハリーがデッキのドアを閉め、列車が動き出すと、おばさんが窓越しに言った。
「体に気をつけるのよ。それから――」
汽車が速度を増した。
「――いい子にするのよ。それから――」
おばさんは汽車に合わせて走っていた。
「――危ないことをしないのよ!」
ハリーは、汽車が角を曲がり、おじさんとおばさんが見えなくなるまで手を振った。それから、みんながどこにいるか探しにかかった。ロンとハーマイオニーは監かん督とく生せい車両に閉じ込められているだろうと思ったが、ジニーは少し離れた通路で友達としゃべっていた。ハリーはトランクを引きずってジニーのほうに移動した。