ハリーが近づくと、みんなが臆面おくめんもなくじろじろ見た。ハリーを見ようと、コンパートメントのガラスに顔を押しつける者さえいる。「日刊にっかん予よ言げん者しゃ新しん聞ぶん」で「選ばれし者」の噂うわさをさんざん書かれてしまったからには、今学期は「じーっ」やら「じろじろ」やらが増えるのに耐えなければならないだろうと予測はしていたが、眩まぶしいスポットライトの中に立つ感覚が楽しいとは思わなかった。ハリーはジニーの肩を叩たたいた。
「コンパートメントを探しにいかないか?」
「だめ、ハリー。ディーンと落ち合う約束してるから」ジニーは明るくそう言った。
「またあとでね」
「うん」
ハリーは、ジニーが長い赤毛を背中に揺ゆらして立ち去るのを見ながら、ズキンと奇き妙みょうに心が波立つのを感じた。夏の間、ジニーがそばにいることに慣れてしまい、学校ではジニーが、自分やロン、ハーマイオニーといつも一いっ緒しょにいるわけではないことを忘れていた。ハリーは瞬まばたきをしてあたりを見回した。すると、うっとりした眼差しの女の子たちに周まわりを囲まれていた。
「やあ、ハリー」
背後で聞き覚えのある声がした。
「ネビル!」
ハリーはほっとした。振り返ると、丸顔の男の子が、ハリーに近づこうともがいていた。
「こんにちは、ハリー」
ネビルのすぐ後ろで、大きい朧おぼろな目をした長い髪かみの女の子が言った。
「やあ、ルーナ。元気?」
「元気だよ。ありがとう」
ルーナが言った。胸に雑誌を抱きしめている。表紙に大きな字で、「めらめらメガネスペクタースペックス」の付ふ録ろくつきと書いてあった。
「それじゃ、『ザ・クィブラー』はまだ売れてるの?」
ハリーが聞いた。先学期、ハリーが独どく占せんインタビューを受けたこの雑誌に、何だか親しみを覚えた。
「うん、そうだよ。発行部数がぐんと上がった」ルーナがうれしそうに言った。
「席を探そう」
ハリーが促うながして、三人は無言で見つめる生徒たちの群れの中を歩きはじめた。やっと空いているコンパートメントを見つけ、ハリーはありがたいとばかり急いで中に入った。