「とにかく」
スラグホーンはハリーに向き直った。
「この夏はいろいろと噂うわさがあった。もちろん、何を信じるべきかはわからんがね。『日にっ刊かん予よ言げん者しゃ』は不正確なことを書いたり、間違いを犯したことがある――しかし、証人が多かったことからしても、疑いの余地はないと思われるが、魔法省で相当の騒ぎがあったし、君はそのまっただ中にいた!」
言い逃れるとしたら完全に嘘うそをつくしかないと思い、ハリーは頷うなずいただけで黙だまり続けた。スラグホーンはハリーににっこり笑いかけた。
「慎つつしみ深い、実に慎み深い。ダンブルドアが気に入っているだけのことはある――それでは、やはりあの場にいたわけだね? しかし、そのほかの話は――あまりにも、もちろん扇せん情じょう的てきで、何を信じるべきかわからないというわけだ――たとえば、あの伝でん説せつ的てき予言だが――」
「僕たち予言を聞いてません」
ネビルが、ゼラニウムのようなピンク色になりながら言った。
「そうよ」ジニーががっちりそれを支持した。
「ネビルもわたしもそこにいたわ。『選ばれし者』なんてばかばかしい話は、『日刊予言者』の、いつものでっち上げよ」
「君たち二人もあの場にいたのかね?」
スラグホーンは興きょう味み津々しんしんで、ジニーとネビルを交互こうごに見た。しかし、促うながすように微笑ほほえむスラグホーンを前にして、二人は貝のように口をつぐんでいた。
「そうか……まあ……『日刊予言者新聞』は、もちろん、往々おうおうにして記事を大げさにする……」
スラグホーンはちょっとがっかりしたような調子で話し続けた。
「あのグウェノグがわたしに話してくれたことだが――そう、もちろん、グウェノグ・ジョーンズだよ。ホリヘッド・ハーピーズの――」
そのあとは長々しい思い出話に逸それていったが、スラグホーンがまだ自分を無罪放免ほうめんにしたわけでもなく、ネビルやジニーの話に納得なっとくしているわけでもないと、ハリーははっきりそう感じ取っていた。