スラグホーンが教えた著名ちょめいな魔法使いたちの逸話いつわで、だらだらと午後が過ぎていった。そうした教え子たちは、全員、喜んでホグワーツの「スラグナメクジ・クラブ」とかに属ぞくしたという。ハリーはその場を離れたくてしかたがなかったが、失礼にならずに出る方法の見当がつかなかった。列車が何度目かの長い霧きりの中を通り過ぎ、まっ赤な夕日が見えたとき、スラグホーンはやっと、薄明うすあかりの中で目を瞬しばたたき、周まわりを見回した。
「なんと、もう暗くなってきた! ランプが灯ともったのに気づかなんだ! みんな、もう帰ってローブに着き替がえたほうがいい。マクラーゲン、ノグテイルに関する例の本を借りに、そのうちわたしのところに寄りなさい。ハリー、ブレーズ――いつでもおいで。ミス、あなたもどうぞ」
スラグホーンはジニーに向かって、にこやかに目をキラキラさせた。
「さあ、お帰り、お帰り!」
ザビニは、ハリーを押しのけて暗い通路に出ながら、意地の悪い目つきでハリーを見た。ハリーはそれにおまけをつけて睨にらみ返した。ハリーはザビニについて、ジニー、ネビルと一いっ緒しょに通路を歩いた。
「終わってよかった」ネビルが呟つぶやいた。「変な人だね?」
「ああ、ちょっとね」
ハリーは、ザビニから目を離さずに言った。
「ジニー、どうしてあそこに来る羽目になったの?」
「ザカリアス・スミスに呪のろいをかけてるところを見られたの」ジニーが言った。
「DディーAエイにいたあのハッフルパフ生のばか、憶おぼえてるでしょう? 魔法省で何があったかって、しつっこくわたしに聞いて、最後にはほんとにうるさくなったから、呪いをかけてやった――そのときスラグホーンが入ってきたから、罰則ばっそくを食らうかと思ったんだけど、すごくいい呪いだと思っただけなんだって。それでランチに招まねかれたってわけ! ばっかばかしいよね?」
「母親が有名だからって招かれるより、まともな理由だよ」
ザビニの後頭部を睨みつけながら、ハリーが言った。
「それとか、おじさんのせいで――」
ハリーはそこで黙だまり込んだ。突然閃ひらめいた考えは、無む鉄てっ砲ぽうだが、うまくいけばすばらしい……もうすぐザビニは、スリザリンの六年生がいるコンパートメントに入っていく。マルフォイがそこにいるはずだ。スリザリンの仲間以外には誰だれにも話を聞かれないと思っているだろう……もしそこに、ザビニのあとから姿を見られずに入り込むことができれば、どんな秘密でも見聞きできるのではないか? たしかに旅はもう残り少ない――車窓を飛び過ぎる荒こう涼りょうたる風景から考えて、ホグズミード駅はあと三十分と離れていないだろう――しかし、どうやら自分以外には、この疑いを真剣に受け止めてくれる人がいないようだ。となれば、自分で証しょう明めいするしかない。
「二人とも、あとで会おう」
ハリーは声をひそめてそう言うと、「透とう明めいマント」を取り出してサッとかぶった。
「でも、何を――?」ネビルが聞いた。
「あとで!」
ハリーはそう囁ささやくなり、ザビニを追ってできるだけ音を立てないように急いだ。もっとも、汽車のガタゴトいう音でそんな気遣きづかいはほとんど無用だった。