通路はいまや空っぽと言えるほどだった。生徒たちはほとんど全員、学校用のローブに着き替がえて荷物をまとめるために、それぞれの車両に戻もどっていた。ハリーはザビニに触ふれないぎりぎりの範囲はんいで密みっ着ちゃくしていたが、ザビニがコンパートメントのドアを開けるのを見計みはからって滑すべり込むのには間に合わなかった。ザビニがドアを閉め切る寸前に、ハリーは慌あわてて敷居しきいに片足を突き出してドアを止めた。
「どうなってるんだ?」
ザビニは癇かん癪しゃくを起こして、何度もドアを閉めようと横に引き、ハリーの足にぶっつけた。
ハリーはドアをつかんで力一杯押し開けた。ザビニは取っ手をつかんだままだったので、横っ飛びにグレゴリー・ゴイルの膝ひざに倒れた。ハリーはどさくさに紛まぎれてコンパートメントに飛び込み、空席になっていたザビニの席に飛び上がり、荷に物もつ棚だなによじ登った。
ゴイルとザビニが歯をむき出して唸うなり合い、みんなの目がそっちに向いていたのは幸いだった。「マント」がはためいたとき、間違いなく踝くるぶしから先がむき出しになったと感じたからだ。上のほうに消えていくスニーカーを、マルフォイがたしかに目で追っていたような気がして、ハリーは一いっ瞬しゅんひやりとした。
やがてゴイルがドアをピシャリと閉め、ザビニを膝から振り落とした。ザビニはくしゃくしゃになって自分の席に座り込んだ。ビンセント・クラッブはまた漫画まんがを読み出し、マルフォイは鼻で笑いながらパンジー・パーキンソンの膝に頭を載のせて、二つ占せん領りょうした席に横になった。
ハリーは、一寸いっすんたりとも「マント」から体がはみ出さないよう窮きゅう屈くつに体を丸めて、パンジー・パーキンソンが、マルフォイの額ひたいに懸かかる滑なめらかなブロンドの髪かみを撫なでるのを眺ながめていた。パンジーは、こんなに羨うらやましい立場はないだろうと言わんばかdiv class="title">