「何も心配には及ばぬ」ダンブルドアは気軽に言った。
「さて……新入生よ、歓迎かんげいいたしますぞ。上級生にはお帰りなさいじゃ! 今年もまた、魔法教育がびっしりと待ち受けておる……」
「夏休みにダンブルドアに会ったときも、ああいう手だった」
ハリーがハーマイオニーに囁いた。
「でも、ダンブルドアがとっくに治なおしているだろうと思ったのに……そうじゃなければ、マダム・ポンフリーが治したはずなのに」
「あの手はもう死んでるみたいに見えるわ」
ハーマイオニーが吐き気を催もよおしたように言った。
「治らない傷というものもあるわ……昔受けた呪のろいとか……それに解げ毒どく剤ざいの効きかない毒薬もあるし……」
「……そして、管理人のフィルチさんから皆に伝えるようにと言われたのじゃが、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズとかいう店で購こう入にゅうした悪戯いたずら用具ようぐは、すべて完全禁止じゃ」
「各かく寮りょうのクィディッチ・チームに入団したい者は、例によって寮りょう監かんに名前を提出すること。試合の解説者も新人を募ぼ集しゅうしておるので、同じく応募おうぼすること」
「今学年は新しい先生をお迎えしておる。スラグホーン先生じゃ」
スラグホーンが立ち上がった。禿はげ頭が蝋燭ろうそくに輝かがやき、ベストを着た大きな腹が下のテーブルに影かげを落とした。
「先生は、かつてわしの同輩どうはいだった方じゃが、昔教えておられた魔ま法ほう薬やく学がくの教師として復帰ふっきなさることにご同意いただいた」
「魔法薬?」
「魔法薬?」
聞き違えたのでは、という声が広間中のあちこちで響ひびいた。
「魔法薬?」ロンとハーマイオニーが、ハリーを振り向いて同時に言った。
「だってハリーが言ってたのは――」
「ところでスネイプ先生は」
ダンブルドアは不審ふしんそうなガヤガヤ声に掻かき消されないよう、声を上げて言った。
「『闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ』の後任の教師となられる」
「そんな!」
あまり大きい声を出したので、多くの人がハリーのほうを見たが、ハリーは意に介かいさず、怒りを顕あらわにして教きょう職しょく員いんテーブルを睨にらみつけた。どうしていまになって、スネイプが「闇の魔術に対する防衛術」に着任するんだ? ダンブルドアが信用していないからスネイプはその職に就つけないというのは、周知のことじゃなかったのか?
「だって、ハリー、あなたは、スラグホーンが『闇の魔術に対する防衛術』を教えるって言ったじゃない!」ハーマイオニーが言った。
「そうだと思ったんだ!」
ハリーは、ダンブルドアがいつそう言ったのかを必死で思い出そうとした。しかし考えてみると、スラグホーンが何を教えるかを、ダンブルドアが話してくれたという記憶がない。