「あれはよかったぜ、ハリー!」
それからしばらくして、休きゅう憩けい時間に入り、安全な場所まで来ると、ロンがうれしそうに高笑いした。
「あんなこと言うべきじゃなかったわ」ハーマイオニーは、ロンを睨にらみながら言った。
「どうして言ったの?」
「あいつは僕に呪いをかけようとしたんだ。もし気づいてなかったのなら言うけど!」
ハリーは、いきり立って言った。
「僕は『閉へい心しん術じゅつ』の授じゅ業ぎょうで、そういうのをいやというほど経験したんだ! たまにはほかのモルモットを使ったらいいじゃないか? だいたいダンブルドアは何をやってるんだ? あいつに『防ぼう衛えい術じゅつ』を教えさせるなんて! あいつが『闇やみの魔ま術じゅつ』のことをどんなふうに話すか聞いたか? あいつは『闇の魔術』に恋してるんだ!『千せん変ぺん万ばん化か、破は壊かい不能ふのう』とか何とか――」
「でも――」ハーマイオニーが言った。
「私は、なんだかあなたみたいなことを言ってるなと思ったわ」
「僕みたいな?」
「ええ。ヴォルデモートと対決するのはどんな感じかって、私たちに話してくれたときだけど。あなたはこう言ったわ。呪じゅ文もんをごっそり覚えるのとは違う、たった一人で、自分の頭と肝きもっ玉たまだけしかないんだって――それ、スネイプが言っていたことじゃない? 結局は勇気とすばやい思考だってこと」
ハーマイオニーが自分の言葉をまるで「基き本ほん呪じゅ文もん集しゅう」と同じように暗記する価値があると思っていてくれたことで、ハリーはすっかり毒気を抜かれ、反論もしなかった。
「ハリー、よう、ハリー!」
振り返るとジャック・スローパーだった。前年度のグリフィンドール・クィディッチ・チームのビーターの一人だ。羊よう皮ひ紙しの巻紙まきがみを持って急いでやってくる。
「君宛あてだ」スローパーは息を切らしながら言った。
「おい、君が新しいキャプテンだって聞いたけど、選抜せんばつはいつだ?」
「まだはっきりしない」
スローパーがチームに戻もどれたら、それこそ幸運というものだ、とハリーは内心そう思った。
「知らせるよ」
「ああ、そうかぁ。今週の週末だといいなと思ったんだけど――」
ハリーは聞いてもいなかった。羊皮紙に書かれた細長い斜め文字には見覚えがあった。まだ言い終わっていないスローパーを置き去りにして、ハリーは羊皮紙を開きながら、ロンとハーマイオニーと一いっ緒しょに急いで歩き出した。
親愛なるハリー
土曜日に個こ人じん教きょう授じゅを始めたいと思う。午後八時にわしの部屋にお越し願いたい。
今学期最初の一日を、きみが楽しく過ごしていることを願っておる。
敬けい 具ぐ
アルバス・ダンブルドア
追伸ついしん わしは「ペロペロ酸飴さんあめ」が好きじゃ。
「『ペロペロ酸さん飴あめ』が好きだって?」
ハリーの肩越しに手紙を覗のぞき込んでいたロンが、わけがわからないという顔をした。
「校長室の外にいる、ガーゴイルを通過つうかするための合あい言葉ことばなんだ」
ハリーが声を落とした。
「ヘンッ! スネイプはおもしろくないぞ……僕の罰則ばっそくがふいになる!」