二人は、ハリーが肖しょう像ぞう画がの穴を抜けていくのを見送った。
ハリーは、誰もいない廊下ろうかを歩いた。ところが、曲がり角からトレローニー先生が現れたので、急いで銅像の影に隠かくれなければならなかった。先生は汚らしいトランプの束たばを切り、歩きながらそれを読んではブツブツ独ひとり言ごとを言っていた。
「スペードの2、対立」
ハリーがうずくまって隠れているそばを通りながら、先生が呟つぶやいた。
「スペードの7、凶きょう。スペードの10、暴力。スペードのジャック、黒くろ髪かみの若者。おそらく悩なやめる若者で、この占い者を嫌っている――」
トレローニー先生は、ハリーの隠かくれている銅像の前でぴたりと足を止めた。
「まさか、そんなことはありえないですわ」苛立いらだたしげな口調だった。
再び歩き出しながら、乱暴にトランプを切り直す音が耳に入り、立ち去ったあとには、安物のシェリー酒の匂においだけが微かすかに残っていた。ハリーはトレローニーがたしかに行ってしまったことを確認してから飛び出し、八階の廊下ろうかへと急いだ。そこにはガーゴイルが一体、壁かべを背に立っていた。
「ペロペロ酸飴さんあめ」
ハリーが唱となえると、ガーゴイルが飛びのき、背後の壁が二つに割れた。ハリーは、そこに現れた動く螺旋らせん階段に乗り、滑なめらかな円を描きながら上に運ばれて、真しん鍮ちゅうのドア・ノッカーがついたダンブルドアの校長室の扉とびらの前に出た。
ハリーはドアをノックした。
「お入り」ダンブルドアの声がした。
「先生、こんばんは」校長室に入りながら、ハリーが挨あい拶さつした。
「ああ、こんばんは、ハリー。お座り」ダンブルドアが微笑ほほえんだ。
「新学期の一週目は楽しかったかの?」
「はい、先生、ありがとうございます」ハリーが�ass="title">