「ゴーントさん、わたしはあなたの息子さんに会いにきたんです」
燕えん尾び服ふくの前にまだ残っていた膿を拭ふき取りながら、オグデンが言った。
「あれがモーフィンですね?」
「ふん、あれがモーフィンだ」
年老いた男が素そっ気けなく言った。
「おまえは純じゅん血けつか?」突然食ってかかるように、男が聞いた。
「どっちでもいいことです」オグデンが冷たく言った。
ハリーは、オグデンへの尊敬の気持が高まるのを感じた。
ゴーントのほうは明らかに違う気持になったらしい。目を細めてオグデンの顔を見ながら、嫌味いやみたっぷりの挑ちょう発はつ口調で呟つぶやいた。
「そう言えば、おまえみたいな鼻を村でよく見かけたな」
「そうでしょうとも。息子さんが、連中にしたい放題ほうだいをしていたのでしたら」
オグデンが言った。
「よろしければ、この話は中で続けませんか?」
「中で?」
「そうです。ゴーントさん。もう申し上げましたが、わたしはモーフィンのことで伺うかがったのです。ふくろうをお送り――」
「俺おれにはふくろうなど役に立たん」ゴーントが言った。「手紙は開けない」
「それでは、訪問の前触まえぶれなしだったなどと、文句は言えないですな」
オグデンがぴしゃりと言った。
「わたしが伺ったのは、今こん早そう朝ちょう、ここで魔ま法ほう法ほうの重大な違反が起こったためで――」
「わかった、わかった、わかった」ゴーントが喚わめいた。
「さあ、家に入りやがれ。どうせクソの役にも立たんぞ!」
家には小さい部屋が三つあるようだった。台所と居い間まを兼かねた部屋が中心で、そこに出入りするドアが二つある。モーフィンは燻くすぶっている暖炉だんろのそばの汚らしい肘掛ひじかけ椅い子すに座り、生きたクサリヘビを太い指に絡からませて、それに向かって蛇語へびごで小さく口ずさんでいた。
シュー、シューとかわいい蛇よ
クーネ、クーネと床に這はえ
モーフィンさまの機嫌きげん取れ
戸口に釘くぎづけされぬよう