「それで、俺たちのことはクズだと思っているんだろう。え?」
ゴーントはいまやオグデンに詰め寄り、黄色い爪つめでオグデンの胸を指しながら喚わめき立てた。
「魔法省が来いと言えばすっ飛んでいくクズだとでも? いったい誰だれに向かって物を言ってるのか、わかってるのか? この小汚こぎたねえ、ちんちくりんの穢けがれた血め!」
「ゴーントさんに向かって話しているつもりでおりましたが」
オグデンは、用心しながらもたじろがなかった。
「そのとおりだ!」ゴーントが吠ほえた。
一いっ瞬しゅん、ハリーは、ゴーントが指を突き立てて卑猥ひわいな手つきをするのかと思った。しかしそうではなく、中指にはめている黒い石つき醜しゅう悪あくな指輪ゆびわを、オグデンの目の前で振って見せただけだった。
「これが見えるか? 見えるか? 何だか知っているか? これがどこから来たものか知っているか? 何世紀も俺の家族の物だった。それほど昔に遡さかのぼる家系かけいだ。しかもずっと純じゅん血けつだ! どれだけの値段をつけられたことがあるかわかるか? 石にペベレル家の紋もん章しょうが刻きざまれた、この指輪に!」
「まったくわかりませんな」
オグデンは、鼻先はなさきにずいと指輪を突きつけられて目を瞬しばたたかせた。
「それに、ゴーントさん、それはこの話には関係がない。あなたの息子さんは、違法な――」
怒りに吠ほえ哮たけり、ゴーントは娘に飛びついた。ゴーントの手がメローピーの首にかかったので、ほんの一いっ瞬しゅんハリーは、ゴーントが娘の首を絞しめるのかと思った。次の瞬しゅん間かん、ゴーントは娘の首にかかっていた金きん鎖ぐさりをつかんで、メローピーをオグデンのほうに引きずってきた。
「これが見えるか?」
オグデンに向かって重そうな金のロケットを振り、メローピーが息を詰まらせて咳せき込む中、ゴーントが大声を上げた。
「見えます。見えますとも!」オグデンが慌あわてて言った。
「スリザリンのだ!」ゴーントが喚わめいた。
「サラザール・スリザリンだ! 我々はスリザリンの最後の末裔まつえいだ。何とか言ってみろ、え?」
「ゴーントさん、娘さんが!」
オグデンが危険を感じて口走ったが、ゴーントはすでにメローピーを放していた。メローピーは、よろよろとゴーントから離れて部屋の隅すみに戻もどり、喘あえぎながら首をさすった。