「それで、メローピーは? あの女は……死んだのですね? ヴォルデモートは孤こ児じ院いんで育ったのではなかったですか?」
「そのとおりじゃ」ダンブルドアが言った。
「ここからはずいぶんと推量を余よ儀ぎなくされるが、何が起こったかを論ろん理り的てきに推理するのは難しいことではあるまい。よいか、駆かけ落ち結婚から数ヵ月後に、トム・リドルはリトル・ハングルトンの屋敷やしきに、妻を伴わずに戻ってきた。リドルが『たぶらかされた』とか『騙だまされた』とか話していると、近所で噂うわさが飛び交った。リドルが言おうとしたのは、魔法をかけられていたがそれが解けたということだったのじゃろうと、わしはそう確信しておる。ただし、あえて言うならば、リドルは頭がおかしいと思われるのを恐れ、とうていそういう言葉を使うことができなかったのであろう。しかし、リドルの言うことを聞いた村人たちは、メローピーがトム・リドルに妊娠にんしんしていると嘘うそをついたためにリドルが結婚したのであろうと推量したのじゃ」
「でもあの人は本当に赤ちゃんを産みました」
「そうじゃ。しかしそれは、結婚してから一年後のことじゃ。トム・リドルは、まだ妊娠中のメローピーを捨すてたのじゃ」
「何がおかしくなったのですか?」ハリーが聞いた。
「どうして『愛の妙薬』が効きかなくなったのですか?」
「またしても推量にすぎんが」ダンブルドアが言った。「しかし、わしはこうであったろうと思うのじゃが、メローピーは夫を深く愛しておったので、魔法で夫を隷れい従じゅうさせ続けることに耐えられなかったのであろう。思うに、メローピーは薬を飲ませるのをやめるという選択をした。自分が夢中だったものじゃから、夫のほうもそのころまでには、自分の愛に応こたえてくれるようになっていると、おそらく、そう確信したのじゃろう。赤ん坊のために一いっ緒しょにいてくれるだろうと、あるいはそう考えたのかもしれぬ。そうだとしたら、メローピーの考えは、そのどちらも誤あやまりであった。リドルは妻を捨て、二度と再び会うことはなかった。そして、自分の息子がどうなっているかを、一度たりとも調べようとはせなんだ」