外は墨すみを流したようにまっ暗な空だった。ダンブルドアの部屋のランプが、前よりいっそう明るくなったような気がした。
「ハリー、今夜はこのくらいでよいじゃろう」ややあって、ダンブルドアが言った。
「はい、先生」ハリーが言った。
ハリーは立ち上がったが、立ち去らなかった。
「先生……こんなふうにヴォルデモートの過去を知ることは、大切なことですか?」
「非常に大切なことじゃと思う」ダンブルドアが言った。
「そして、それは……それは予言と何か関係があるのですか?」
「大いに関係しておる」
「そうですか」ハリーは少し混乱したが、安心したことに変わりはなかった。
ハリーは帰りかけたが、もう一つ疑問が起こって、振り返った。
「先生、ロンとハーマイオニーに、先生からお聞きしたことを全部話してもいいでしょうか?」
ダンブルドアは一いっ瞬しゅん、ハリーを観察するようにじっと見つめ、それから口を開いた。
「よろしい。ミスター・ウィーズリーとミス・グレンジャーは、信頼できる者たちであることを証しょう明めいしてきた。しかし、ハリー、きみに頼んでおこう。この二人には、ほかの者にいっさい口外こうがいせぬようにと、伝えておくれ。わしがヴォルデモート卿きょうの秘密をどれほど知っておるか、または推量しておるかという話が広まるのは、よいことではない」
「はい、先生。ロンとハーマイオニーだけにとどめるよう、僕が気をつけます。おやすみなさい」
ハリーは、再び踵きびすを返した。そしてドアのところまで来たとき、ハリーはある物を見た。壊こわれやすそうな銀の器具がたくさん載のった細い脚あしのテーブルの一つに、醜みにくい大きな金の指輪ゆびわがあった。指輪に嵌はまった黒い大きな石が割れている。
「先生」ハリーは目を見張った。「あの指輪は――」
「何じゃね?」ダンブルドアが言った。
「スラグホーン先生を訪たずねたあの夜、先生はこの指輪をはめていらっしゃいました」
「そのとおりじゃ」ダンブルドアが認めた。
「でも、あれは……先生、あれは、マールヴォロ・ゴーントがオグデンに見せたのと、同じ指輪ゆびわではありませんか?」
「まったく同一じゃ」ダンブルドアが一礼した。
「でも、どうして……? ずっと先生がお持ちだったのですか?」
「いや、ごく最近手に入れたのじゃ」ダンブルドアが言った。
「実は、きみのおじ上うえ、おば上うえのところにきみを迎えに行く数日前にのう」
「それじゃ、先生が手にけがをなさったころですね?」
「そのころじゃ。そうじゃよ、ハリー」
ハリーは躊ちゅう躇ちょした。ダンブルドアは微笑ほほえんでいた。
「先生、いったいどうやって――?」
「ハリー、もう遅い時間じゃ! 別の機会に話して聞かせよう。おやすみ」
「おやすみなさい。先生」