「午前中はクィディッチの選抜せんばつだ!」ロンが言った。
「なんとその上、フリットウィックの『アグアメンティ 水増みずまし』呪文を練習しなくちゃ! どっちにしろ、何を説明するって言うんだ? ハグリッドに、あんなばかくさい学科は大嫌いだったなんて言えるか?」
「大嫌いだったんじゃないわ!」ハーマイオニーが言った。
「君と一いっ緒しょにするなよ。僕は『尻しっ尾ぽ爆ばく発はつスクリュート』を忘れちゃいないからな」
ロンが暗い顔で言った。
「君は、ハグリッドがあの間抜けな弟のことをくだくだ自慢するのを聞いてないからなあ。はっきり言うけど、僕たち実は危あやういところを逃れたんだぞ――あのままハグリッドの授業を取り続けてたら、僕たちきっと、グロウプに靴紐くつひもの結び方を教えていたぜ」
「ハグリッドと口もきかないなんて、私、嫌だわ」
ハーマイオニーは落ち着かないようだった。
「クィディッチのあとで行こう」
ハリーがハーマイオニーを安心させた。ハリーもハグリッドと離れているのは寂さびしかった。もっともロンの言うとおり、グロウプがいないほうが、自分たちの人生は安らかだろうと思った。
「だけど、選抜せんばつは午前中一杯かかるかもしれない。応おう募ぼ者しゃが多いから」
キャプテンになってからの最初の試練しれんを迎えるので、ハリーは少し神しん経けい質しつになっていた。
「どうして急に、こんなに人気のあるチームになったのか、わかんないよ」
「まあ、ハリーったら、しょうがないわね」
ハーマイオニーが、こんどは突然苛立いらだった。
「クィディッチが人気者なんじゃないわ。あなたよ! あなたがこんなに興味をそそったことはないし、率直に言って、こんなにセクシーだったことはないわ」
ロンは燻くん製せい鰊にしんの大きな一切れで咽むせた。ハーマイオニーはロンに軽蔑けいべつしたような一瞥いちべつを投げ、それからハリーに向き直った。
「あなたの言っていたことが真実だったって、いまでは誰だれもが知っているでしょう? ヴォルデモートが戻もどってきたと言ったことも正しかったし、この二年間にあなたが二度もあの人と戦って、二度とも逃れたことも本当だと、魔法界全体が認めざるをえなかったわ。そしていまはみんなが、あなたのことを、『選ばれし者』と呼んでいる――さあ、しっかりしてよ。みんながあなたに魅み力りょくを感じる理由がわからない?」
大おお広ひろ間まの天井は冷たい雨あめ模も様ようだったにもかかわらず、ハリーはその場が急に暑くなったような気がした。