「その上、あなたを情じょう緒ちょ不ふ安あん定ていの嘘うそつきに仕立て上げようと、魔法省がさんざん迫害はくがいしたのに、それにも耐え抜いた。あの邪悪じゃあくな女が、あなた自身の血で刻きざませた痕あとがまだ見えるわ。でもあなたは、とにかく節せつを折らなかった……」
「魔法省で脳ミソが僕を捕まえたときの痕、まだ見えるよ。ほら」
ロンは腕を振って袖そでをまくった。
「それに、夏の間にあなたの背が三十センチも伸びたことだって、悪くないわ」
ハーマイオニーはロンを無視したまま、話し終えた。
「僕も背が高い」些細ささいなことのようにロンが言った。
郵便ふくろうが到着し、雨粒あまつぶだらけの窓からスィーッと入ってきて、みんなに水滴すいてきをばら撒まいた。大多数の生徒がいつもよりたくさんの郵便を受け取っていた。親は心配して子供の様子を知りたがっていたし、逆に、家族は無事だと子供に知らせて、安心させようとしていた。
ハリーは学期が始まってから一度も手紙を受け取っていなかった。定期的に手紙をくれたただ一人の人はもう死んでしまった。ルーピンがときどき手紙をくれるのではと期待していたが、いままでずっと失望続きだった。
ところが、茶色や灰色のふくろうに交じって、雪のように白いヘドウィグが円を描いていたので、ハリーは驚いた。大きな四角い包みを運んで、ヘドウィグがハリーの前に着地した。その直後、まったく同じ包みがロンの前に着地したが、疲労困憊こんぱいした豆ふくろうのピッグウィジョンが、その下敷したじきになっていた。
「おっ!」
ハリーが声を上げた。包みを開けると、フローリシュ・アンド・ブロッツ書店からの、真新しい「上じょう級きゅう魔ま法ほう薬やく」の教科書が現れた。
「よかったわ」
ハーマイオニーがうれしそうに言った。
「これであの落書き入りの教科書を返せるじゃない」
「気は確かか?」ハリーが言った。
「僕はあれを放さない! ほら、もうちゃんと考えてある――」
ハリーはカバンから古本の「上じょう級きゅう魔ま法ほう薬やく」を取り出し、「ディフィンド! 裂さけよ!」と唱となえながら杖つえで表紙を軽く叩たたいた。表紙がはずれた。新しい教科書にも同じことをした(ハーマイオニーは、なんて破は廉れん恥ちなという顔をした)。次にハリーは表紙を交換こうかんし、それぞれを叩いて「レパロ! 直せ!」と唱えた。