最初の五人の中で、ゴールを三回守った者は一人としていなかった。コーマック・マクラーゲンは、五回のペナルティ・スロー中四回までゴールを守ったので、ハリーはがっかりした。しかし、最後の一回は、とんでもない方向に飛びついた。観かん衆しゅうに笑ったり野や次じったりされ、マクラーゲンは歯軋はぎしりして地上に戻もどった。
ロンはクリーンスイープ11号にまたがりながら、いまにも失神しっしんしそうだった。
「がんばって!」
スタンドから叫さけぶ声が聞こえた。ハリーはハーマイオニーだろうと思って振り向いた。ところがラベンダー・ブラウンだった。ラベンダーが次の瞬しゅん間かん、両手で顔を覆おおったが、ハリーも正直そうしたい気分だった。しかし、キャプテンとして、少しは骨のあるところを見せなければならないと、ロンのトライアルを直ちょく視しした。
ところが、心配無用だった。ロンはペナルティ・スローに対して、一回、二回、三回、四回、五回と続けてゴールを守った。うれしくて、観衆と一いっ緒しょに歓声かんせいを上げたいのをやっとこらえ、ハリーは、まことに残念だがロンが勝った、とマクラーゲンに告げようと振り向いた。そのとたん、マクラーゲンのまっ赤な顔が、ハリーの目と鼻はなの先にヌッと出た。ハリーは慌あわてて一歩下がった。
「ロンの妹のやつが、手て加か減げんしたんだ」
マクラーゲンが脅おどすように言った。バーノンおじさんの額ひたいで、よくハリーが拝おがませてもらったと同じような青筋あおすじが、マクラーゲンのこめかみでひくひくしていた。
「守りやすいスローだったんだ」
「くだらない」ハリーは冷たく言った。
「あの一球は、ロンが危あやうくミスするところだった」
マクラーゲンはもう一歩ハリーに詰め寄ったが、ハリーはこんどこそ動かなかった。
「もう一回やらせてくれ」
「だめだ」ハリーが言った。
「君はもうトライが終わってる。四回守った。ロンは五回守った。ロンがキーパーだ。正せい々せい堂どう々どう勝ったんだ。そこをどいてくれ」
一いっ瞬しゅん、パンチを食らうのではないかと思ったが、マクラーゲンは醜みにくいしかめっ面をしただけで矛ほこを収め、見えない誰だれかを脅すように唸うなりながら、荒々しくその場を去った。