「ハグリッド」ハーマイオニーがおずおずと言った。
ハグリッドもテーブルに着き、ジャガイモの皮を剥むきはじめたが、一つひとつに個人的な恨うらみでもあるかのような、乱暴な剥き方だった。
「私たち、ほんとに『魔ま法ほう生せい物ぶつ飼し育いく学がく』を続けたかったのよ」
ハグリッドは、またしても大きくフンと言った。ハリーは鼻クソがたしかにじゃがいもに着地したような気がして、夕食をご馳走ちそうになる予定がないことを、内心喜んだ。
「ほんとよ!」ハーマイオニーが言った。
「でも、三人とも、どうしても時間割にはまらなかったの!」
「ああ、そうだろうよ」ハグリッドが同じことを言った。
ガボガボと変な音がして、三人はあたりを見回した。ハーマイオニーが小さく悲鳴を上げた。部屋の隅すみに大きな樽たるが置いてあることに、三人はたったいま気づいた。ロンは椅い子すから飛び上がり、急いで席を移動して樽から離れた。樽の中には、三十センチはあろうかという蛆虫うじむしがいっぱい、ヌメヌメと白い身体からだをくねらせていた。
「ハグリッド、あれは何?」
ハリーはむかつきを隠かくして、興味があるような聞き方をしようと努力したが、ロックケーキはやはり皿に戻もどした。
「幼虫のおっきいやつだ」ハグリッドが言った。
「それで、育つと何になるの……?」ロンは心配そうに聞いた。
「こいつらは育たねえ」ハグリッドが言った。
「アラゴグに食わせるために捕とったんだ」
そしてハグリッドは、出し抜けに泣き出した。
「ハグリッド!」
ハーマイオニーが驚いて飛び上がり、蛆虫の樽を避よけるのにテーブルを大回りしながらも急いで、ハグリッドの震ふるえる肩に腕を回した。
「どうしたの?」
「あいつの……ことだ……」
コガネムシのように黒い目から涙を溢あふれさせ、エプロンで顔をゴシゴシ拭ふきながら、ハグリッドはぐっと涙をこらえた。
「アラゴグ……あいつよ……死にかけちょる……この夏、具合が悪くなって、よくならねえ……あいつに、もしものことが……俺おれはどうしたらいいんだか……俺たちはなげーこと一いっ緒しょだった……」