ローストビーフの匂においが、ハリーの空きっ腹を締しめつけた。しかし、グリフィンドールのテーブルに向かって三歩と歩かないうちに、スラグホーン先生が現れて行く手を塞ふさいだ。
「ハリー、ハリー、まさに会いたい人のお出ましだ!」
セイウチ髭ひげの先端せんたんをひねりながら、巨大な腹を突き出して、スラグホーンは機嫌きげんよく大声で言った。
「夕食前に君を捕まえたかったんだ! 今夜はここでなく、わたしの部屋で軽く一ひと口くちどうかね? ちょっとしたパーティをやる。希望の星が数人だ。マクラーゲンも来るし、ザビニも、チャーミングなメリンダ・ボビンも来る――メリンダはもうお知り合いかね? 家族が大きな薬くすり問どん屋やチェーン店を所有しているんだが――それに、もちろん、ぜひミス・グレンジャーにもお越しいただければ、大変うれしい」
スラグホーンは、ハーマイオニーに軽く会え釈しゃくして言葉を切った。ロンには、まるで存在しないかのように、目もくれなかった。
「先生、伺うかがえません」ハリーが即座そくざに答えた。
「スネイプ先生の罰則ばっそくを受けるんです」
「おやおや!」
スラグホーンのがっかりした顔が滑稽こっけいだった。
「それはそれは。君が来るのを当てにしていたんだよ、ハリー! あ、それではセブルスに会って、事情を説明するほかないようだ。きっと罰則を延期えんきするよう説得せっとくできると思うね。よし、二人とも、それでは、あとで!」
スラグホーンはあたふたと大おお広ひろ間まを出ていった。
「スネイプを説得するチャンスはゼロだ」
スラグホーンが声の届かないほど離れたとたん、ハリーが言った。
「一度は延期されてるんだ。相手がダンブルドアだからスネイプは延期したけど、ほかの人ならしないよ」
「ああ、あなたが来てくれたらいいのに。ひとりじゃ行きたくないわ!」
ハーマイオニーが心配そうに言った。マクラーゲンのことを考えているなと、ハリーには察さっしがついた。
「ひとりじゃないと思うな。ジニーがたぶん呼ばれる」
スラグホーンに無視されたのがお気に召さない様子のロンが、バシリと言った。