いつものように、フィルチが正面の樫かしの木の扉とびらのところに立って、ホグズミード行きの許可を得ている生徒の名前を照らし合わせて印をつけていた。フィルチが「詮索せんさくセンサー」で全員を一人三回も検査するので、いつもよりずっと時間がかかった。
「闇やみの品物を外に持ち出したら、何か問題あるのか?」
長細い「詮索センサー」を心配そうにじろじろ見ながら、ロンが問い質ただした。
「帰りに中に持ち込む物をチェックすべきなんじゃないか?」
生意気の報むくいに、ロンは「センサー」で二、三回よけいに突っつかれ、三人で風と霙みぞれの中に歩み出したときも、まだ痛そうに顔をしかめていた。
ホグズミードまでの道程みちのりは、楽しいとは言えなかった。ハリーは顔の下半分にマフラーを巻きつけたが、さらされている肌がひりひり痛み、すぐにかじかんだ。村までの道は、刺さすような向かい風に体を折り曲げて進む生徒で一杯だった。暖かい談だん話わ室しつで過ごしたほうがよかったのではないかと、ハリーは一度ならず思った。
やっとホグズミードに着いてみると、ゾンコの悪戯いたずら専せん門もん店てんに板が打ちつけてあるのが見えた。ハリーは、この遠足は楽しくないと、これで決まったように思った。ロンは手袋に分厚く包くるまれた手で、ハニーデュークスの店を指した。ありがたいことに開いている。ハリーとハーマイオニーは、ロンの進むあとをよろめきながらついて歩き、混んだ店に入った。
「助かったぁ」
ヌガーの香りがする暖かい空気に包まれ、ロンが身を震ふるわせた。
「午後はずっとここにいようよ」
「やあ、ハリー!」三人の後ろで声が轟とどろいた。
「しまった」
ハリーが呟つぶやいた。三人が振り返ると、スラグホーン先生がいた。巨大な毛皮の帽子ぼうしに、おそろいの毛け皮がわ襟えりのついたオーバーを着て、砂さ糖とう漬づけパイナップルの大きな袋を抱え、少なくとも店の四分の一を占せん領りょうしていた。