「ハリー、わたしのディナーをもう三回も逃したですぞ!」
ハリーの胸を機嫌きげんよく小こ突づいて、スラグホーンが言った。
「それじゃあいけないよ、君。絶対に君を呼ぶつもりだ! ミス・グレンジャーは気に入ってくれている。そうだね?」
「はい」ハーマイオニーはしかたなく答えた。「本当に――」
「だから、ハリー、来ないかね?」スラグホーンが詰め寄った。
「ええ、先生、僕、クィディッチの練習があったものですから」
ハリーが言った。スラグホーンから紫のリボンで飾かざった小さな招しょう待たい状じょうが送られてきたときは、たしかに、いつも練習の予定とかち合っていた。この戦せん略りゃくのおかげでロンは取り残されることがなく、ジニーと三人で、ハーマイオニーがマクラーゲンやザビニと一いっ緒しょに閉じ込められている様子を想像しては、笑っていた。
「そりゃあ、そんなに熱心に練習したのだから、むろん最初の試合に勝つことを期待してるよ!」スラグホーンが言った。
「しかし、ちょっと息抜きをしても悪くはない。さあ、月曜日の夜はどうかね。こんな天気じゃあ、とても練習したいとは思わないだろう……」
「だめなんです、先生。僕――あの――その晩ダンブルドア先生との約束があって」
「こんどもついてない!」
スラグホーンが大げさに嘆なげいた。
「ああ、まあ……永久にわたしを避さけ続けることはできないよ、ハリー!」
スラグホーンは堂々と手を振り、短い足でよちよちと店から出ていった。ロンのことはまるで「ゴキブリ・ゴソゴソ豆板まめいた」の展てん示じ品ひんであるかのように、ほとんど見向きもしなかった。
「こんども逃れおおせたなんて、信じられない」ハーマイオニーが頭を振りながら言った。
「そんなにひどいというわけでもないのよ……まあまあ楽しいときだってあるわ……」
しかしそのとき、ハーマイオニーはちらりとロンの表情をとらえた。
「あ、見て――『デラックス砂さ糖とう羽は根ねペン』がある――これって何時間も持つわよ!」
ハーマイオニーが話題を変えてくれたことでほっとして、ハリーは新商品の特大砂糖羽根ペンに、ふだん見せないような強い関心を示して見せた。しかしロンは塞ふさぎ込んだままで、ハーマイオニーが次はどこに行こうかと聞いても肩をすくめただけだった。
「『三本の箒ほうき』に行こうよ」ハリーが言った。
「きっと暖あったかいよ」