三人は、マフラーを顔に巻き直し、菓子店を出た。ハニーデュークスの甘い温ぬくもりのあとはなおさら冷たい風が、顔をナイフのように刺さした。通りは人影もまばらで、立ち話をする人もなく、誰だれもが目的地に急いでいた。例外は少し先にいる二人の男で、ハリーたちの行く手の、「三本の箒」の前に立っていた。一人はとても背が高く痩やせている。雨に濡ぬれたメガネを通して、ハリーが目を細めて見ると、ホグズミードにあるもう一軒いっけんのパブ、「ホッグズ・ヘッド」で働くバーテンだとわかった。ハリー、ロン、ハーマイオニーが近づくと、その男はマントの襟えりをきつく閉め直して立ち去った。残された背の低い男は、腕に抱えた何かをぎごちなく扱っている。すぐそばまで近づいてはじめて、ハリーはその男が誰だれかに気づいた。
「マンダンガス!」
赤あか茶ちゃ色いろのざんばら髪がみにガニ股またのずんぐりした男は、飛び上がって、くたびれたトランクを落とした。トランクがパックリと開き、ガラクタ店のショーウインドウをそっくり全部ぶちまけたようなありさまになった。
「ああ、よう、アリー」
マンダンガス・フレッチャーは何でもない様子を見事にやり損そこねた。
「いーや、かまわず行っちくれ」
そして這はいつくばってトランクの中身を掻かき集めはじめたが、「早くずらかりたい」という雰ふん囲い気き丸出しだった。
「こういうのを売ってるの?」
マンダンガスが地面を引ひっ掻かくようにして、汚らしい雑多ざったな品物を拾い集めるのを見ながら、ハリーが聞いた。
「ああ、ほれ、ちっとは稼かせがねえとな」マンダンガスが答えた。
「そいつをよこせ!」
ロンが屈かがんで何か銀色の物を拾い上げていた。
「待てよ」
ロンが何か思い当たるように言った。
「どっかで見たような――」
「あんがとよ!」
マンダンガスは、ロンの手からゴブレットを引ったくり、トランクに詰め込んだ。
「さて、そんじゃみんな、またな――イテッ!」