ハリーは学校に向かって疾走しっそうした。いまのケイティのようなありさまは見たことがないし、何が原因かも思いつかなかった。小道のカーブを飛ぶように回り込んだとき、後足あとあしで立ち上がった巨大な熊くまのようなものに衝しょう突とつして撥はね返された。
「ハグリッド!」
生垣いけがきにはまり込んだ体を解き放ちながら、ハリーは息を弾はずませて言った。
「ハリー!」
眉毛まゆげにも髯ひげにも霙みぞれを溜ためたハグリッドは、いつものボサボサしたビーバー皮のでかいオーバーを着ていた。
「グロウプに会いにいってきたとこだ。あいつはほんとに進歩してな、おまえさん、きっと――」
「ハグリッド、あっちに怪け我が人にんがいる。呪のろいか何かにやられた――」
「あー?」
風の唸うなりでハリーの言ったことが聞き取れず、ハグリッドは身を屈かがめた。
「呪いをかけられたんだ!」ハリーが大声を上げた。
「呪い? 誰がやられた――ロンやハーマイオニーじゃねえだろうな?」
「違う、二人じゃない。ケイティ・ベルだ――こっち……」
二人は小道を駆け戻った。ケイティを囲む小さな集団を見つけるのに、そう時間はかからなかった。ケイティはまだ地べたで身悶みもだえし、叫び続けていた。ロン、ハーマイオニー、リーアンが、ケイティを落ち着かせようとしていた。
「下がっとれ!」ハグリッドが叫んだ。「見せてみろ!」
「ケイティがどうにかなっちゃったの!」リーアンがすすり泣いた。
「何が起こったのかわからない――」
ハグリッドは一いっ瞬しゅんケイティを見つめ、それから一言も言わずに身を屈かがめてケイティを抱き取り、城のほうに走り去った。数秒後には、耳を劈つんざくようなケイティの悲鳴が聞こえなくなり、ただ風の唸りだけが残った。