「ロンったら」ハーマイオニーがお手上げだという口調で言った。
「ちゃんと包んであるはずだから、触らなくてすむでしょうし、マントの中に簡単に隠かくせるから、誰だれにも見えないはずだわ! マルフォイがボージン・アンド・バークスに何を保管しておいたにせよ、騒がしい物か嵩張かさばる物よ。それを運んで道を歩いたら人目ひとめを引くことになるような、そういう何かだわ――それに、いずれにせよ」
ハーマイオニーは、ハリーに反論される前に、声を張り上げてぐいぐい話を進めた。
「私がボージンにネックレスのことを聞いたのを、憶おぼえている? マルフォイが何を取り置くように頼んだのか調べようとして店に入ったとき、ネックレスがあるのを見たわ。ところが、ボージンは簡単に値段を教えてくれた。もう売ばい約やく済ずみだなんて言わなかった――」
「そりゃ、君がとてもわざとらしかったから、あいつは五秒も経たないうちに君の狙ねらいを見破ったんだ。もちろん君には教えなかっただろうさ――どっちにしろ、マルフォイは、あとで誰かに引き取りに行かせることだって――」
「もう結構けっこう!」
ハーマイオニーが憤然ふんぜんと反論しようとして口を開きかけると、マクゴナガル先生が言った。
「ポッター、話してくれたことはありがたく思います。しかし、あのネックレスが売られたと思われる店に行ったという、ただそれだけで、ミスター・マルフォイに嫌疑けんぎをかけることはできません。同じことが、ほかの何百人という人に対しても言えるでしょう――」
「――僕もそう言ったんだ――」ロンがブツブツ呟つぶやいた。
「――いずれにせよ、今年は厳げん重じゅうな警けい護ご対たい策さくを施ほどこしてあります。あのネックレスが私わたくしたちの知らないうちに校内に入るということは、とても考えられません――」
「――でも――」
「――さらにです――」マクゴナガル先生は、威厳いげんある最さい後ご通つう告こくの雰ふん囲い気きで言った。
「ミスター・マルフォイは今日、ホグズミードに行きませんでした」
ハリーは空気が抜けたように、ポカンと先生を見つめた。
「どうしてご存知ぞんじなんですか、先生?」
「なぜなら、私わたくしが罰則ばっそくを与えたからです。変へん身しん術じゅつの宿題を、二度も続けてやってこなかったのです。そういうことですから、ポッター、あなたが私わたくしに疑念ぎねんを話してくれたことには礼を言います」
マクゴナガルは、三人の前を決然けつぜんと歩きながら言った。
「しかし私わたくしはもう、ケイティ・ベルの様子を見に病びょう棟とうに行かなければなりません。三人とも、お帰りなさい」