ダンブルドアは白黒タイルが貼はってある玄げん関かんホールに入った。全体にみすぼらしいところだったが、染しみ一つなく清潔せいけつだった。ハリーと老ダンブルドアは、そのあとからついていった。背後の玄関ドアがまだ閉まりきらないうちに、痩やせた女性が、煩わずらわしいことが多すぎるという表情でせかせかと近づいてきた。とげとげしい顔つきは、不親切というより心配事の多い顔だった。ダンブルドアのほうに近づきながら、振り返って、エプロンをかけた別のヘルパーに何か話している。
「……それから上にいるマーサにヨードチンキを持っていっておあげ。ビリー・スタッブズは瘡蓋かさぶたをいじってるし、エリック・ホエイリーはシーツが膿うみだらけで――もう手一杯なのに、こんどは水みず疱ぼう瘡そうだわ」
女性は誰だれに言うともなくしゃべりながら、ダンブルドアに目を留とめた。とたんに、たったいまキリンが玄関から入ってきたのを見たかのように、唖然あぜんとして、女性はその場に釘くぎづけになった。
「こんにちは」
ダンブルドアが手を差し出した。ミセス・コールはポカンと口を開けただけだった。
「アルバス・ダンブルドアと申します。お手紙で面会をお願いしましたところ、今日ここにお招まねきをいただきました」
ミセス・コールは目を瞬しばたたいた。どうやらダンブルドアが幻覚げんかくではないと結論を出したらしく、弱々しい声で言った。
「ああ、そうでした。ええ――ええ、では――わたしの事務室にお越しいただきましょう。そうしましょう」
ミセス・コールはダンブルドアを小さな部屋に案内した。事務所兼けん居い間まのようなところだ。玄関ホールと同じくみすぼらしく、古ぼけた家具はてんでんバラバラだった。客にぐらぐらした椅い子すに座るよう促うながし、自分は雑然ざつぜんとした机の向こう側に座って、落ち着かない様子でダンブルドアをじろじろ見た。