ミセス・コールはほとんど無む意い識しきに、もう一杯たっぷりとジンを注ついだ。頬骨ほおぼねの高い位置に、ピンクの丸い点が二つ現れた。それから言葉が続いた。
「おかしな男の子ですよ」
「ええ」ダンブルドアが言った。「そうではないかと思いました」
「赤ん坊のときもおかしかったんですよ。そりゃ、あなた、ほとんど泣かないんですから。そして、少し大きくなると、あの子は……変でねえ」
「変というと、どんなふうに?」ダンブルドアが穏おだやかに聞いた。
「そう、あの子は――」
しかし、ミセス・コールは言葉を切った。ジンのグラスの上から、ダンブルドアを詮索せんさくするようにちらりと見た眼差しには、曖昧あいまいにぼやけたところがまるでなかった。
「あの子は間違いなく、あなたの学校に入学できると、そうおっしゃいました?」
「間違いありません」ダンブルドアが言った。
「わたしが何を言おうと、それは変わりませんね?」
「何をおっしゃろうとも」ダンブルドアが言った。
「あの子を連れていきますね? どんなことがあっても?」
「どんなことがあろうと」ダンブルドアが重々しく言った。
信用すべきかどうか考えているように、ミセス・コールは目を細めてダンブルドアを見た。どうやら信用すべきだと判断したらしく、一気にこう言った。
「あの子はほかの子供たちを怯おびえさせます」
「いじめっ子だと?」ダンブルドアが聞いた。
「そうに違いないでしょうね」
ミセス・コールはちょっと顔をしかめた。
「しかし、現場をとらえるのが非常に難むずかしい。事件がいろいろあって……気味の悪いことがいろいろ……」
ダンブルドアは深追ふかおいしなかった。しかしハリーには、ダンブルドアが興味を持っていることがわかった。ミセス・コールはまたしてもぐいとジンを飲み、バラ色の頬ほおがますます赤くなった。