「あなたは誰だれですか?」
「きみに言ったとおりだよ。私わたくしはダンブルドア教きょう授じゅで、ホグワーツという学校に勤めている。私の学校への入学を勧すすめにきたのだが――きみが来たいのなら、そこがきみの新しい学校になる」
この言葉に対するリドルの反応は、まったく驚くべきものだった。ベッドから飛び降り、憤ふん激げきした顔でダンブルドアから遠ざかった。
「騙だまされないぞ! 精せい神しん病びょう院いんだろう。そこから来たんだろう? 『教授』、ああ、そうだろうさ――ふん、僕は行かないぞ、わかったか? あの老いぼれ猫のほうが精神病院に入るべきなんだ。僕はエイミー・ベンソンとかデニス・ビショップなんかのチビたちに何にもしてない。聞いてみろよ。あいつらもそう言うから!」
「私は精神病院から来たのではない」ダンブルドアは辛抱しんぼう強く言った。
「私は先生だよ。おとなしく座ってくれれば、ホグワーツのことを話して聞かせよう。もちろん、きみが学校に来たくないというなら、誰も無む理り強じいはしない――」
「やれるもんならやってみろ」リドルが鼻先はなさきで笑った。
「ホグワーツは」
ダンブルドアは、リドルの最後の言葉を聞かなかったかのように話を続けた。
「特別な能力を持った者のための学校で――」
「僕は狂っちゃいない!」
「きみが狂っていないことは知っておる。ホグワーツは狂った者の学校ではない。魔法学校なのだ」
沈ちん黙もくが訪おとずれた。リドルは凍こおりついていた。無表情だったが、その目はすばやくダンブルドアの両目を交互こうごにちらちらと見て、どちらかの目が嘘うそをついていないかを見極みきわめようとしているかのようだった。
「魔法?」リドルが囁ささやくように繰くり返した。
「そのとおり」ダンブルドアが言った。
「じゃ……じゃ、僕ができるのは魔法?」
「きみは、どういうことができるのかね?」
「いろんなことさ」
リドルが囁くように言った。首から痩やせこけた頬ほおへと、たちまち興こう奮ふんの色が上ってきた。熱があるかのように見えた。
「物を触さわらずに動かせる。訓練しなくとも、動物に僕の思いどおりのことをさせられる。僕を困らせるやつには、いやなことが起こるようにできる。そうしたければ、傷つけることだってできるんだ」