足が震ふるえてリドルは前のめりに倒れ、またベッドの上に座った。頭を垂たれ、祈いのりのときのような姿勢しせいで、リドルは両手を見つめた。
「僕はほかの人とは違うんだって、知っていた」
震ふるえる自分の指に向かって、リドルは囁ささやいた。
「僕は特別だって、わかっていた。何かあるって、ずっと知っていたんだ」
「ああ、きみの言うとおり」
ダンブルドアはもはや微笑ほほえんではいなかった。リドルをじっと観察していた。
「きみは魔法使いだ」
リドルは顔を上げた。表情がまるで変わっていた。激はげしい喜びが現れている。しかし、なぜかその顔は、よりハンサムに見えるどころか、むしろ端正たんせいな顔立ちが粗そ野やに見え、ほとんど獣じゅう性せいをむき出した表情だった。
「あなたも魔法使いなのか?」
「いかにも」
「証しょう明めいしろ」
即座そくざにリドルが言った。「真実を言え」と言ったときと同じ命令口調だった。
ダンブルドアは眉まゆを上げた。
「きみに異存いぞんはないだろうと思うが、もし、ホグワーツへの入学を受け入れるつもりなら――」
「もちろんだ!」
「それなら、私わたくしを『教きょう授じゅ』または『先生』と呼びなさい」
ほんの一いっ瞬しゅん、リドルの表情が硬かたくなった。それから、がらりと人が変わったように丁寧ていねいな声で言った。
「すみません、先生。あの――教授、どうぞ、僕に見せていただけませんか――?」
ハリーは、ダンブルドアが絶対断ことわるだろうと思った。ホグワーツで実例を見せる時間が十分ある、いま二人がいる建物はマグルで一杯だから、慎しん重ちょうでなければならないと、リドルにそう言いきかせるだろうと思った。ところが、驚いたことに、ダンブルドアは背広の内ポケットから杖つえを取り出し、隅すみにあるみすぼらしい洋よう箪だん笥すに向けて、気軽にひょいと一振りした。
洋箪笥が炎えん上じょうした。