リドルは飛び上がった。ハリーは、リドルがショックと怒りで吠ほえ哮たけるのも無理はないと思った。リドルの全財産がそこに入っていたに違いない。しかし、リドルがダンブルドアに食ってかかったときにはもう、炎は消え、洋箪笥はまったく無傷むきずだった。
リドルは、洋箪笥とダンブルドアを交互こうごに見つめ、それから貪欲どんよくな表情で杖を指差した。
「そういう物はどこで手に入れられますか?」
「すべて時が来きたれば――」」ダンブルドアが言った。
「何か、きみの洋箪笥から出たがっているようだが」
なるほど、中から微かすかにカタカタという音が聞こえた。リドルははじめて怯おびえた顔をした。
「扉とびらを開けなさい」ダンブルドアが言った。
リドルは躊ちゅう躇ちょしたが、部屋の隅すみまで歩いていって洋よう箪だん笥すの扉をパッと開けた。すり切れた洋服の掛かかったレールの上にある、いちばん上の棚たなに、小さな段ボールの箱があり、まるでネズミが数匹捕とらわれて中で暴れているかのように、カタカタ音を立てて揺ゆれていた。
「それを出しなさい」ダンブルドアが言った。
リドルは震ふるえている箱を下ろした。気が挫くじけた様子だった。
「その中に、きみが持っていてはいけない物が何か入っているかね?」
リドルは、抜け目のない目で、ダンブルドアを長い間じっと見つめた。
「はい、そうだと思います、先生」リドルはやっと、感情のない声で答えた。
「開けなさい」ダンブルドアが言った。
リドルは蓋ふたを取り、中身を見もせずにベッドの上に空けた。ハリーはもっとすごい物を期待していたが、あたりまえの小さなガラクタがごちゃごちゃ入っているだけだった。ヨーヨー、銀の指貫ゆびぬき、色の褪あせたハーモニカなどだ。箱から出されると、ガラクタは震えるのをやめ、薄うすい毛布の上でじっとしていた。