「お座り」ハリーの傍かたわらに着地したダンブルドアが言った。
ハリーは言われるとおりにした。いま見たばかりのことで、頭が一杯だった。
「あいつは、僕の場合よりずっと早く受け入れた――あの、先生があいつに、君は魔法使いだって知らせたときのことですけれど」ハリーが言った。「ハグリッドにそう言われたとき、僕は最初信じなかった」
「そうじゃ。リドルは完全に受け入れる準備ができておった。つまり自分が――あの者の言葉を借りるならば――『特別』だということを」
「先生はもうおわかりだったのですか――あのときに?」ハリーが聞いた。
「わしがあのとき、開かい闢びゃく以来の危険な闇やみの魔法使いに出会ったということを、わかっていたか、とな?」ダンブルドアが言った。
「いや、いま現在あるような者に成長しようとは、思わなんだ。しかし、リドルに非常に興味を持ったことは確かじゃ。わしは、あの者から目を離すまいと意を固めて、ホグワーツに戻もどった。リドルには身み寄よりもなく友人もなかったのじゃから、いずれにせよ、そうすべきではあったのじゃが。しかし、本人のためだけではなく、ほかの者のためにそうすべきであるということは、すでにそのときに感じておった」
「あの者の力は、きみも聞いたように、あの年端としはもゆかぬ魔法使いにしては、驚おどろくほど高度に発達しておった。そして――もっとも興味深いことに、さらに不吉なことに――リドルはすでに、その力を何らかの方法で操あやつることができるとわかっており、意識的にその力を行使こうししはじめておった。きみも見たように、若い魔法使いにありがちな、行き当たりばったりの試こころみではなく、あの者はすでに、魔法を使ってほかの者を恐がらせ、罰ばっし、制御せいぎょしていた。首をくくった兎うさぎや、洞どう窟くつに誘さそい込まれた少年、少女のちょっとした逸話いつわが、それを如実にょじつに示しておる……そうしたければ、傷つけることだってできるんだ……」
「それに、あいつは蛇へび語ご使づかいだった」ハリーが口を挟はさんだ。
「いかにも。稀け有うな能力であり、闇やみの魔ま術じゅつにつながるものと考えられている能力じゃ。しかし、知ってのとおり、偉大いだいにして善ぜん良りょうな魔法使いの中にも蛇語使いはおる。事実、蛇と話せるというあの者の能力を、わしはそれほど懸念けねんしてはおらなかった。むしろ、残酷ざんこくさ、秘ひ密みつ主しゅ義ぎ、支し配はい欲よくという、あの者の明白な本能のほうがずっと心配じゃった」