「そこ、おしゃべりが多すぎる!」
ピリッとした声がして、スプラウト先生が怖こわい顔をして忙せわしげに三人のそばにやって来た。
「あなたたち、遅れてますよ。ほかの生徒は全員取りかかってますし、ネビルはもう最初の種を取り出しました」
三人が振り向くと、たしかに、ネビルは唇くちびるから血を流し、顔の横に何ヵ所かひどい引っ掻かき傷を作ってはいたが、グレープフルーツ大の緑の種をつかんで座っていた。種はぴくぴくと気持の悪い脈みゃくを打っている。
「オーケー、先生、僕たちいまから始めます!」
ロンが言ったが、先生が行ってしまうと、こっそりつけ加えた。
「耳塞ぎ呪文マフリアートを使うべきだったな、ハリー」
「いいえ、使うべきじゃないわ!」
ハーマイオニーが即座そくざに言った。プリンスやその呪じゅ文もんのことが出るといつもそうなのだが、こんどもたいそうご機嫌きげん斜めだった。
「さあ、それじゃ……始めましょう……」
ハーマイオニーは不安そうに二人を見た。三人とも深く息を吸すって、節ふしくれだった株かぶに飛びかかった。
植物はたちまち息を吹き返した。先端せんたんから長い棘とげだらけのイバラのような蔓つるが飛び出し、鞭むちのように空を切った。その一本がハーマイオニーの髪かみに絡からみつき、ロンが剪せん定てい鋏ばさみでそれを叩たたき返した。ハリーは、蔓を二本首尾しゅびよくつかまえて結び合わせた。触しょく手しゅのような枝と枝のまん中に穴が空いた。ハーマイオニーが勇敢ゆうかんにも片腕を穴に突っ込んだ。すると穴が罠わなのように閉じて、ハーマイオニーの肘ひじを捕とらえた。ハリーとロンが蔓を引っぱったりねじったりして、その穴をまた開かせ、ハーマイオニーは腕を引っぱり出した。その指に、ネビルのと同じような種が握にぎりしめられていた。とたんにトゲトゲした蔓は株の中に引っ込み、節くれだった株は、何食わぬ顔で、木材の塊かたまりのようにおとなしくなった。
「あのさ、自分の家うちを持ったら、僕の庭にはこんなの植える気がしないな」
ゴーグルを額ひたいに押し上げ、顔の汗を拭ぬぐいながら、ロンが言った。
「ボウルを渡してちょうだい」
ぴくぴく脈を打っている種を、腕を一杯に伸ばしてできるだけ離して持ちながら、ハーマイオニーが言った。ハリーが渡すと、ハーマイオニーは気持悪そうに種をその中に入れた。
「びくびくしていないで、種を絞しぼりなさい。新鮮しんせんなうちがいちばんなんですから!」
スプラウト先生が遠くから声をかけた。