「僕を誘うつもりだった?」ロンの声ががらりと変わった。
「そうよ」ハーマイオニーが怒ったように言った。
「でも、どうやらあなたは、私がマクラーゲンとくっついたほうが……」
一いっ瞬しゅん、間が空いた。ハリーは、しぶとく撥はね返す種を移い植しょくごてで叩たたき続けていた。
「いや、そんなことはない」ロンがとても小さな声で言った。
ハリーは種を叩き損そこねてボウルを叩いてしまい、ボウルが割れた。
「レパロ、直せ」
ハリーが杖つえで破片はへんを突ついて慌あわてて唱となえると、破片は飛び上がって元通りになった。しかし、割れた音でロンとハーマイオニーは、ハリーの存在に目め覚ざめたようだった。ハーマイオニーは取り乱した様子で、スナーガラフの種から汁しるを絞しぼる正しいやり方を見つけるのに、慌てて「世界の肉にく食しょく植しょく物ぶつ」の本を探しはじめた。ロンのほうは、ばつが悪そうな顔だったが、同時にかなり満足げだった。
「それ、よこして、ハリー」ハーマイオニーが急せき立たてた。
「何か鋭するどい物で穴を空けるようにって書いてあるわ……」
ハリーはボウルに入った種を渡し、ロンと二人でゴーグルをつけ直し、もう一度株かぶに飛びかかった。
それほど驚いたわけではなかった……首を絞めにかかってくるトゲだらけの蔓つると格闘かくとうしながら、ハリーはそう思った。遅かれ早かれこうなるという気がしていた。ただ、自分がそれをどう感じるかが、はっきりわからなかった……。
自分とチョウは、気まずくて互いに目を合わすことさえできなくなっているし、話をすることなどありえない。もしロンとハーマイオニーがつき合うようになって、それから別れたら……? 二人の友情はそれでも続くだろうか? 三年生のとき、二人が数週間、互いに口をきかなくなったときのことを、ハリーは思い出した。なんとか二人の距離きょりを埋めようとするのにひと苦労だった。
逆に、もし二人が別れなかったらどうだろう? ビルとフラーのようになったら、そして二人のそばにいるのが気まずくていたたまれないほどになったら、自分は永久に閉め出されてしまうのだろうか?
「やったあ!」
木の株かぶから二つ目の種を引っぱり出して、ロンが叫さけんだ。ちょうどハーマイオニーが一個目をやっと割ったときだった。ボウルは、イモムシのように蠢うごめく薄うす緑みどり色いろの塊茎かいけいで一杯になっていた。
それからあとは、スラグホーンのパーティに触ふれることなく授じゅ業ぎょうが終わった。その後の数日間、ハリーは二人の友人をより綿密めんみつに観察していたが、ロンもハーマイオニーも特にこれまでと違うようには見えなかった。ただし、互いに対して、少し礼儀れいぎ正しくなったようだった。パーティの夜、スラグホーンの薄明うすあかりの部屋で、バタービールに酔ようとどうなるか、様子を見るほかないだろう、とハリーは思った。むしろいまは、もっと差さし迫せまった問題があった。