その晩、ディーンが飛ぶのを見たハリーは、自分の選択せんたくを後悔こうかいする理由がなくなった。ディーンはジニーやデメルザとも上手くいった。ビーターのピークスとクートは尻上しりあがりに上手くなっていた。問題はロンだった。
ハリーにははじめからわかっていたことだが、ロンは神しん経けい質しつになったり自じ信しん喪そう失しつしたりで、プレイにむらがあった。そういう昔からのロンの不安定さが、シーズン開かい幕まく戦せんが近づくに従って、残念ながらぶり返していた。六回もゴールを抜かれて――その大部分がジニーの得点だったが――ロンのプレイはだんだん荒れ、とうとう攻せめてくるデメルザ・ロビンズの口にパンチを食らわせるところまで来てしまった。
「ごめん、デメルザ、事故だ、事故、ごめんよ!」
デメルザがそこいら中に血をボタボタ垂たらしながらジグザグと地上に戻もどる後ろから、ロンが叫さけんだ。
「僕、ちょっと――」
「――パニクった?」ジニーが怒った。「このヘボ。ロン、デメルザの顔見てよ!」
デメルザの隣となりに着地して腫はれ上がった唇くちびるを調べながら、ジニーが怒ど鳴なり続けた。
「僕が治なおすよ」
ハリーは二人のそばに着地し、デメルザの口に杖つえを向けて唱となえた。
「『エピスキー、唇くちびる癒いえよ』。それから、ジニー、ロンのことをヘボなんて呼ぶな。君はチームのキャプテンじゃないんだし――」
「あら、あなたが忙いそがしすぎて、ロンのことをヘボ呼ばわりできないみたいだったから、誰だれかがそうしなくちゃって思って――」
ハリーは噴ふき出したいのをこらえた。
「みんな、空へ。さあ、行こう……」
全体的に、練習は今学期最悪の一つだった。しかしハリーは、これだけ試合が迫せまったこの時期に、ばか正直は最さい善ぜんの策さくではないと思った。
「みんな、いいプレイだった。スリザリンをぺしゃんこにできるぞ」
ハリーは激励げきれいした。チェイサーとビーターは、自分のプレイにまあまあ満足した顔で更こう衣い室しつを出た。
「僕のプレイ、ドラゴンのクソ山盛やまもりみたいだった」
ジニーが出ていって、ドアが閉まったとたん、ロンが虚うつろな声で言った。
「そうじゃないさ」ハリーがきっぱりと言った。
「ロン、選抜せんばつした中で、君が一番いいキーパーなんだ。唯ゆい一いつの問題は君の精せい神しん面めんさ」