「さあ」
ジニーが長い赤毛あかげを顔から振り払い、ロンを睨にらみつけた。
「はっきり白黒をつけましょう。わたしが誰とつき合おうと、その人と何をしようと、ロン、あなたには関係ないわ――」
「あるさ!」
ロンも同じぐらい腹を立てていた。
「いやだね、みんなが僕の妹のことを何て呼ぶか――」
「何て呼ぶの?」ジニーが杖つえを取り出した。
「何て呼ぶって言うの?」
「ジニー、ロンは別に他た意いはないんだ――」
ハリーは反はん射しゃ的てきにそう言ったが、怪物はロンの言葉を支持して吠ほえ哮たけっていた。
「いいえ、他意があるわ!」
ジニーはメラメラ燃え上がり、ハリーに向かって怒ど鳴なった。
「自分がまだ、一度もいちゃついたことがないから、自分がもらった最高のキスが、ミュリエルおばさんのキスだから――」
「黙だまれ!」ロンは赤をすっ飛ばして濃こげ茶ちゃ色いろの顔で大声を出した。
「黙らないわ!」ジニーも我を忘れて叫さけんだ。
「あなたがヌラーと一いっ緒しょにいるところを、わたし、いつも見てたわ。彼女を見るたびに、頬ほっぺたにキスしてくれないかって、あなたはそう思ってた。情けないわ! 世の中に出て、少しは自分でもいちゃついてみなさいよ! そしたら、ほかの人がやってもそんなに気にならないでしょうよ!」
ロンも杖を引っぱり出した。ハリーは二人の間に割って入った。
「自分が何を言ってるか、わかってないな!」
ロンは、両手を広げて立ちふさがっているハリーを避よけて、まっすぐにジニーを狙ねらおうとしながら吠ほえた。
「僕が公こう衆しゅうの面前でやらないからといって――!」
ジニーは嘲あざけるようにヒステリックに笑い、ハリーを押しのけようとした。
「ピッグウィジョンにでもキスしてたの? それともミュリエルおばさんの写真を枕の下にでも入れてるの?」
「こいつめ――」
オレンジ色の閃光せんこうが、ハリーの左腕の下を通り、わずかにジニーを逸それた。ハリーはロンを壁かべに押しつけた。
「ばかなことはやめろ――」
「ハリーはチョウ・チャンとキスしたわ!」
ジニーはいまにも泣き出しそうな声で叫んだ。
「それに、ハーマイオニーはビクトール・クラムとキスした。ロン、あなただけが、それが何だかいやらしいもののように振舞ふるまうのよ。あなたが十二歳の子供並みの経験しかないからだわ!」
その捨すて台詞ぜりふとともに、ジニーは嵐のように荒れ狂って去っていった。ハリーはすぐにロンを放した。ロンは殺気さっき立だっていた。二人は荒い息をしながら、そこに立っていた。そこへフィルチの飼い猫のミセス・ノリスが、物陰ものかげから現れ、張りつめた空気を破った。