次の朝目が覚めたとき、ハリーは少しぼーっとしていた。ロンがビーターの棍棒こんぼうを持ってハリーを追いかけてくる一連の夢を見て、頭が混乱していたが、昼ごろには、夢のロンと現実のロンを取とり替かえられたらいいのに、と思うようになっていた。
ロンはジニーとディーンを冷たく無視したばかりでなく、ハーマイオニーをも氷のように冷たい意地悪さで無視し、ハーマイオニーはわけがわからず傷ついた。その上、ロンは一夜にして平均的な「尻しっ尾ぽ爆ばく発はつスクリュート」のようになり、爆発寸前で、いまにも尻尾で打ちかかってきそうだった。
ハリーは、ロンとハーマイオニーを仲直りさせようと、一日中努力したがムダだった。とうとう、ハーマイオニーは、いたく憤慨ふんがいして寝室しんしつへと去り、ロンは、自分に眼がんをつけたと言って、怯おびえる一年生の何人かを怒ど鳴なりつけて悪態あくたいをついた末、肩を怒いからせて男だん子し寮りょうに歩いていった。
ロンの攻こう撃げき性せいが数日経っても治まらなかったのには、ハリーも愕然がくぜんとした。さらに悪いことに、時を同じくしてキーパーとしての技術が一段と落ち込み、ロンはますます攻撃的になった。
土曜日の試合を控ひかえた最後のクィディッチの練習では、チェイサーがロンめがけて放はなつゴールシュートを、一つとして防げなかった。それなのに誰だれかれかまわず大声で怒鳴りつけ、とうとうデメルザ・ロビンズを泣かせてしまった。
「黙だまれよ。デメルザをかまうな!」
ピークスが叫さけんだ。ロンの背丈せたけの三分の二しかなくとも、ピークスにはもちろん重い棍棒こんぼうがあった。
「いい加減かげんにしろ!」
ハリーが声を張り上げた。ジニーがロンの方向を睨にらみつけているのを見たハリーは、ジニーが「コウモリ鼻糞はなくその呪のろい」の達人だという評ひょう判ばんを思い出し、手に負えない結果になる前にと、飛び上がって間に入った。
「ピークス、戻もどってブラッジャーをしまってくれ。デメルザ、しっかりしろ、今日のプレイはとてもよかったぞ。ロン……」
ハリーは、ほかの選手が声の届かないところまで行くのを待ってから、言葉を続けた。
「君は僕の親友だ。だけどほかのメンバーにあんなふうな態度を取り続けるなら、僕は君をチームから追い出す」
一いっ瞬しゅんハリーは、ロンが自分を殴なぐるのではないかと本気でそう思った。しかし、もっと悪いことが起こった。ロンは箒ほうきの上にぺちゃっとつぶれたように見えた。闘志とうしがすっかり消え失せていた。
「僕、やめる。僕って最低だ」
「君は最低なんかじゃないし、やめない!」
ハリーはロンの胸座むなぐらをつかんで激はげしい口調で言った。
「好調なときは、君は何だって止められる。精せい神しんの問題だ!」
「僕のこと、弱虫だって言うのか?」
「ああ、そうかもしれない!」
一瞬、二人は睨み合った。そして、ロンが疲れたように頭を振った。