「別なキーパーを見つける時間がないことはわかってる。だから、明日はプレイするよ。だけど、もし負けたら、それに負けるに決まってるけど、僕はチームから身を引く」
ハリーが何と言っても事態じたいは変わらなかった。夕食の間中、ハリーはロンの自信を高めようと努力したが、ロンはハーマイオニーに意地の悪い不ふ機き嫌げんな態度を取ることに忙しくて、気づいてくれなかった。
ハリーはその晩ばん、談だん話わ室しつでもがんばったが、ロンがチームを抜けたらチーム全体が落胆らくたんするだろうというハリーの説もどうやら怪しくなってきた。ほかの選手たちが部屋の隅すみに集合して、間違いなくロンについてブツブツ文句を言い、険悪けんあくな目つきでロンを見たりしていたのだ。
とうとうハリーは、こんどは怒ってみて、ロンを挑ちょう発はつしようとした。闘争とうそう心しんに火を点つけ、うまくいけばゴールを守れる態度にまで持っていこうとしたのだが、この戦せん略りゃくも、激励げきれいより効果が上がったようには見えなかった。ロンは相変わらず絶望ぜつぼうし、しょげきって寝室しんしつに戻もどった。
ハリーは、長いこと暗い中で目を開けていた。来るべき試合に負けたくなかった。キャプテンとして最初の試合だからということだけではない。ドラコ・マルフォイへの疑惑ぎわくをまだ証しょう明めいすることはできなかったが、せめてクィディッチでは、マルフォイを絶対打ち破ると決心していたからだ。しかし、ロンのプレイがここ数回の練習と同じ調子なら、勝利の可能性は非常に低い……。
何かロンの気持を引き立たせるものがありさえすれば……絶ぜっ好こう調ちょうでプレイさせることができれば……ロンにとって本当にいい日なのだと保ほ証しょうする何かがあれば……。
すると、その答えが、一発で、急に輝かがやかしい啓示けいじとなって閃ひらめいた。
次の日の朝食は、例によって前ぜん哨しょう戦せんだった。スリザリン生はグリフィンドール・チームの選手が大おお広ひろ間まに入ってくるたびに、一人ひとりに野や次じとブーイングを浴あびせた。ハリーが天井をちらりと見ると、晴れた薄青うすあおの空だった。幸先さいさきがいい。
グリフィンドールのテーブルは赤と金色の塊かたまりとなって、ハリーとロンが近づくのを歓声かんせいで迎えた。ハリーはニヤッと笑って手を振ったが、ロンは弱々しく顔をしかめ、頭を振った。
「元気を出して、ロン!」ラベンダーが遠くから声をかけた。
「あなた、きっとすばらしいわ!」
ロンはラベンダーを無視した。