ハーマイオニーは何て破は廉れん恥ちなという顔をして屈み込み、ハリーにだけ聞こえるように囁ささやき声で非難した。
「あなた、退校処分しょぶんになるべきだわ。ハリー、あなたがそんなことをする人だとは思わなかったわ!」
「自分のことを棚たなに上げて――」ハリーが囁き返した。
「最近誰だれかさんを『錯乱さくらん』させやしませんでしたか?」
ハーマイオニーは、荒々しく二人から離れて、席に着いた。ハリーはハーマイオニーが去っていくのを見ても後悔こうかいしなかった。クィディッチがいかに真しん剣けん勝しょう負ぶであるかを、ハーマイオニーは心しんから理解したことがないんだ。それからハリーは、舌舐したなめずりしているロンに顔を向けた。
「そろそろ時間だ」ハリーは快活かいかつに言った。
競きょう技ぎ場じょうに向かう二人の足下あしもとで、凍こおりついた草が音を立てた。
「こんなにいい天気なのは、ラッキーだな、え?」ハリーがロンに声をかけた。
「ああ」ロンは半病人のような青い顔で答えた。
ジニーとデメルザは、もうクィディッチのユニフォームに着き替がえ、更こう衣い室しつで待機たいきしていた。
「最高のコンディションだわ」ジニーがロンを無視して言った。
「それに、何があったと思う? あのスリザリンのチェイサーのベイジー――昨日きのう練習中に、頭にブラッジャーを食らって、痛くてプレイできないんですって! それに、もっといいことがあるの――マルフォイも病気で休場!」
「何だって?」
ハリーはいきなり振り向いてジニーを見つめた。
「あいつが、病気? どこが悪いんだ?」
「さあね。でもわたしたちにとってはいいことだわ」ジニーが明るく言った。
「向こうは、代わりにハーパーがプレイする。わたしと同学年で、あいつ、ばかよ」
ハリーは曖昧あいまいに笑いを返したが、真紅しんくのユニフォームに着替えながら、心はクィディッチからまるで離れていた。マルフォイは前にけがを理由にプレイできないと主張したことがあった。あのときは、全試合のスケジュールがスリザリンに有利になるように変更されるのを狙ねらったものだった。こんどは、なぜ代理を立てても満足なのだろう? 本当に病気なのか、それとも仮け病びょうなのか?