「怪しい、だろ?」ハリーは声をひそめてロンに言った。
「マルフォイがプレイしないなんて」
「僕ならラッキー、と言うね」ロンは少し元気になったようだった。
「それにベイジーも休場だ。あっちのチームの得点王だぜ。僕はあいつと対抗したいとは――おい!」
キーパーのグローブを着ける途中で、ロンは急に動きを止め、ハリーをじっと見た。
「何だ?」
「僕……君……」
ロンは声を落とし、怖こわさと興こう奮ふんとが入り交じった顔をした。
「僕の飲み物……かぼちゃジュース……君、もしや……?」
ハリーは眉まゆを吊つり上げただけで、それには答えず、こう言った。
「あと五分ほどで試合開始だ。ブーツを履はいたほうがいいぜ」
選手は、歓声かんせいとブーイングの湧わき上がる競きょう技ぎ場じょうに進み出た。スタンドの片側は赤と金色一色、反対側は一面の緑と銀色だった。ハッフルパフ生とレイブンクロー生の多くも、どちらかに味方した。叫さけび声と拍手の最中さなか、ルーナ・ラブグッドの有名な獅し子し頭がしら帽子ぼうしの咆哮ほうこうが、ハリーにははっきりと聞き取れた。
ハリーは、ボールを木箱から放はなす用意をして待っている、レフェリーのマダム・フーチのところへ進んだ。
「キャプテン、握手あくしゅ」
マダム・フーチが言った。ハリーは新しいスリザリンのキャプテン、ウルクハートに片手を握りつぶされた。
「箒ほうきに乗って。ホイッスルの合図で……一……二……三……」
ホイッスルが鳴り、ハリーも選手たちも凍こおった地面を強く蹴けった。試合開始だ。
ハリーは競技場の円周を回るように飛び、スニッチを探しながら、ずっと下をジグザグに飛んでいるハーパーを監視かんしした。すると、いつもの解説者とは水と油ほどに不ふ調ちょう和わな声が聞こえてきた。
「さあ、始まりました。今年ポッターが組織したチームには、我々全員が驚いたと思います。ロナルド・ウィーズリーは去年、キーパーとしてむらがあったので、多くの人がロンはチームからはずされると思ったわけですが、もちろん、キャプテンとの個人的な友情が役に立ちました……」