「あいつは今日、自分が特別だと思っているようだな?」
意地の悪い声がして、ハリーは危あやうく箒ほうきから叩たたき落とされそうになった。ハーパーが故こ意いにハリーに体当たりしたのだ。
「おまえのダチ、血を裏切うらぎる者め……」
マダム・フーチは背中を向けていた。下でグリフィンドール生が怒って叫さけんだが、マダム・フーチが振り返ってハーパーを見たときには、とっくに飛び去ってしまっていた。ハリーは肩の痛みをこらえて、ハーパーのあとを追いかけた。ぶつかり返してやる……。
「さあ、スリザリンのハーパー、スニッチを見つけたようです!」
ザカリアス・スミスがメガホンを通してしゃべった。
「そうです。間違いなく、ポッターが見ていない何かを見ました!」
スミスはまったくあほうだ、とハリーは思った。二人が衝しょう突とつしたのに気づかなかったのか? しかし次の瞬しゅん間かん、ハリーは自分の胃い袋ぶくろが空から落下したような気がした――スミスが正しくてハリーが間違っていた。ハーパーは、やみくもに飛ばしていたわけではなかった。ハリーが見つけられなかった物を見つけたのだ。スニッチは、二人の頭上のまっ青さおに澄すんだ空に、眩まぶしく輝かがやきながら高々と飛んでいた。
ハリーは加速かそくした。風が耳元でヒューヒューと鳴り、スミスの解説も観かん衆しゅうの声も掻かき消してしまった。しかしハーパーはまだハリーの先を飛び、グリフィンドールはまだ一〇〇点しか先行していない。ハーパーが先に目もく標ひょうに着けば、グリフィンドールは負ける……そしていま、ハーパーは目標まであと数十センチと迫せまり、手を伸ばした……。
「おい、ハーパー!」ハリーは夢中で叫さけんだ。
「君に代理を頼むのに、マルフォイはいくら払った?」
なぜそんなことを口走ったのか、ハリーは自分でもわからなかったが、ぎくりとしたハーパーは、スニッチをつかみ損そこね、指の間をすり抜けたスニッチを飛び越してしまった。そしてハリーは、パタパタ羽ばたく小さな球たまめがけて腕を大きく振り、キャッチした。
「やった!」
ハリーが叫さけんだ。スニッチを高々と掲かかげ、ハリーは矢のように地上へと飛んだ。状況がわかったとたん、観かん衆しゅうから大だい歓かん声せいが湧わき起こり、試合終了を告げるホイッスルがほとんど聞こえないほどだった。