「ああ、ハリー、こんばんは」
ハーマイオニーの声は、いまにも壊こわれそうだった。
「ちょっと練習していたの」
「うん……小鳥たち……あの……とってもいいよ……」ハリーが言った。
ハリーは、何と言葉をかけていいやらわからなかった。ハーマイオニーがロンに気づかずに、パーティがあまり騒々そうぞうしいから出てきただけという可能性はあるだろうか、とハリーが考えていたそのとき、ハーマイオニーが不自然に高い声で言った。
「ロンは、お祝いを楽しんでるみたいね」
「あー……そうかい?」ハリーが言った。
「ロンを見なかったようなふりはしないで」ハーマイオニーが言った。
「あの人、特に隠かくしていた様子は――」
背後のドアが突然開いた。ハリーは凍こおりつく思いがした。ロンがラベンダーの手を引いて、笑いながら入ってきたのだ。
「あっ」ハリーとハーマイオニーに気づいて、ロンがぎくりと急停止した。
「あらっ!」ラベンダーはクスクス笑いながら後退あとずさりして部屋から出ていった。その後ろでドアが閉まった。
恐ろしい沈ちん黙もくが膨ふくれ上がり、うねった。ハーマイオニーはロンをじっと見たが、ロンはハーマイオニーを見ようとせず、空から威い張ばりと照れくささが奇き妙みょうに交じり合った態度でハリーに声をかけた。
「よう、ハリー! どこに行ったのかと思ったよ」
ハーマイオニーは、机からするりと降りた。金色の小鳥の小さな群れが、さえずりながらハーマイオニーの頭の周囲を回り続けていたので、ハーマイオニーはまるで羽の生えた不思議な太たい陽よう系けいの模型もけいのように見えた。
「ラベンダーを外に待たせておいちゃいけないわ」ハーマイオニーが静かに言った。
「あなたがどこに行ったのかと思うでしょう」
ハーマイオニーは背筋せすじを伸ばして、ゆっくりとドアのほうへ歩いていった。ハリーがロンをちらりと見ると、この程度ですんでほっとした、という顔をしていた。
「オパグノ! 襲おそえ!」出口から鋭するどい声が飛んできた。
ハリーがすばやく振り返ると、ハーマイオニーが荒々しい形ぎょう相そうで、杖つえをロンに向けていた。小鳥の小さな群れが、金色こんじきの丸い弾丸だんがんのように、次々とロンめがけて飛んできた。ロンは悲鳴を上げて両手で顔を隠かくしたが、小鳥の群れは襲おそいかかり、肌という肌をところかまわず突っつき、引ひっ掻かいた。
「こぃつら追っぱらえ!」
ロンが早口に叫さけんだ。しかしハーマイオニーは、復ふく讐しゅうの怒りに燃える最後の一瞥いちべつを投げ、力ちから任まかせにドアを開けて姿を消した。ハリーは、ドアがバタンと閉まる前に、すすり泣く声を聞いたような気がした。