ハーマイオニーは、「数かず占うらない」のレポートを書いていた長い羊よう皮ひ紙しの巻紙まきがみをたくし上げ、羽根ペンの音を響ひびかせ続けた。ハリーはそれを見ながら、心は遠くへと飛んでいた。
「待てよ――」ハリーはふと思い当たった。
「フィルチが、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズで買った物は何でも禁止にしたはずだけど?」
「それで? フィルチが禁止した物を、気にした人なんているかしら?」
ハーマイオニーは、レポートに集中したままで言った。
「だけど、ふくろうは全部検査されてるんじゃないのか? なのに、その女の子たちが、惚ほれ薬ぐすりを学校に持ち込めたっていうのは、どういうわけだ?」
「フレッドとジョージが、香水こうすいと咳止せきどめ薬に偽装ぎそうして送ってきたの。あの店の『ふくろう通信販売サービス』の一環いっかんよ」
「ずいぶん詳くわしいじゃないか」
ハーマイオニーは、いましがたハリーの「上じょう級きゅう魔ま法ほう薬やく」の本を見たと同じ目つきで、ハリーを見た。
「夏休みに、あの人たちが、私とジニーに見せてくれた瓶びんの裏うらに、全部書いてありました」
ハーマイオニーが冷たく言った。
「私、誰だれかの飲み物に薬を入れて回るようなまねはしません……入れるふりもね。それも同どう罪ざいだわ……」
「ああ、まあ、それは置いといて」ハリーは急いで言った。
「要するに、フィルチは騙だまされてるってことだな? 女の子たちが何かに偽装した物を学校に持ち込んでいるわけだ! それなら、マルフォイだってネックレスを学校に持ち込めないわけは――?」
「まあ、ハリー……また始まった……」
「ねえ、持ち込めないわけはないだろう?」ハリーが問い詰めた。
「あのね」ハーマイオニーはため息をついた。
「『詮索せんさくセンサー』は呪のろいとか呪詛じゅそ、隠蔽いんぺいの呪じゅ文もんを見破るわけでしょう? 闇やみの魔ま術じゅつや闇の物品を見つけるために使われるの。ネックレスにかかっていた強力な呪のろいなら、たちまち見つけ出したはずだわ。でも、単に瓶びんと中身が違っているだけの物は、認識にんしきしないでしょうね――それに、いずれにせよ『愛あいの妙みょう薬やく』は闇やみの物でもないし、危険でも――」
「君は簡単にそう言うけど――」
ハリーは、ロミルダ・ベインのことを考えながら言った。
「――だから、それが咳止せきどめ薬ではないと見破るかどうかは、フィルチしだいっていうことになるわ。でも、あの人はあんまり優ゆう秀しゅうな魔法使いではないし、薬の見分けがつくかどうか、怪あやしい――」