ハリーはルーナを引っぱって人混みの中に入っていった。たったいま、長く豊かな栗色くりいろの髪かみが、「妖女ようじょシスターズ」のメンバーと思おぼしき二人の間に消えるのを、本当に見かけたのだ。
「ハーマイオニー、ハーマイオニー!」
「ハリー! ここにいたの。よかった! こんばんは、ルーナ!」
「何があったんだ?」ハリーが聞いた。
ハーマイオニーは、「悪魔あくまの罠わな」の茂みと格闘かくとうして逃れてきたばかりのように、見るからにぐしゃぐしゃだった。
「ああ、逃げてきたところなの――つまり、コーマックを置いてきたばかりなの」
ハリーが怪訝けげんな顔で見つめ続けていたので、ハーマイオニーが「ヤドリギの下に」と説明を加えた。
「あいつと来た罰ばつだ」ハリーは厳きびしい口調で言った。
「ロンがいちばんいやがると思ったの」ハーマイオニーが冷静れいせいに言った。「ザカリアス・スミスではどうかと思ったこともちょっとあったけど、全体として考えると――」
「スミスなんかまで考えたのか?」ハリーはむかついた。
「ええ、そうよ。そっちを選んでおけばよかったと思いはじめたわ。マクラーゲンて、グロウプでさえ紳士しんしに見えてくるような人。あっちに行きましょう。あいつがこっちにくるのが見えるわ。なにしろ大きいから……」
三人は、途と中ちゅうで蜂はち蜜みつ酒しゅのゴブレットをすくい取って、部屋の反対側へと移動した。そこに、トレローニー先生がぽつんと立っているのに気づいたときには、もう遅かった。
「こんばんは」ルーナが、礼儀れいぎ正しくトレローニー先生に挨あい拶さつした。
「おや、こんばんは」
トレローニー先生は、やっとのことでルーナに焦しょう点てんを合わせた。ハリーはこんどもまた、安物の料理用シェリー酒の匂においを嗅かぎ取った。
「あたくしの授じゅ業ぎょうで、最近お見かけしないわね……」
「はい、今年はフィレンツェです」ルーナが言った。
「ああ、そうそう」
トレローニー先生は腹立たしげに、酔よっ払ぱらいらしい忍び笑いをした。
「あたくしは、むしろ『駄だ馬ばさん』とお呼びしますけれどね。あたくしが学校に戻もどったからには、ダンブルドア校長があんな馬を追い出してしまうだろうと、そう思いませんでしたこと? でも、違う……クラスを分けるなんて……侮ぶ辱じょくですわ、そうですとも、侮辱。ご存知ぞんじかしら……」