ハリーはぞっとした。スラグホーンが片腕を伸ばしたかと思うと、どこからともなく呼び出したかのように、スネイプをそばに引き寄せた。
「こそこそ隠かくれずに、セブルス、一いっ緒しょにやろうじゃないか!」
スラグホーンが楽しげにしゃっくりした。
「たったいま、ハリーが魔法薬の調ちょう合ごうに関してずば抜けていると、話していたところだ。もちろん、ある程度君のおかげでもあるな。五年間も教えたのだから!」
両肩をスラグホーンの腕に絡からめ取られ、スネイプは暗い目を細くして、鉤鼻かぎばなの上からハリーを見下ろした。
「おかしいですな。我わが輩はいの印象では、ポッターにはまったく何も教えることができなかったが」
「ほう、それでは天性てんせいの能力ということだ!」スラグホーンが大声で言った。「最初の授じゅ業ぎょうで、ハリーがわたしに渡してくれた物を見せたかったね。『生いける屍しかばねの水みず薬ぐすり』――一回目であれほどの物を仕上げた生徒は一人もいない――セブルス、君でさえ――」
「なるほど?」
ハリーを抉えぐるように見たまま、スネイプが静かに言った。ハリーはある種の動揺どうようを感じた。新しく見出された魔法薬の才能の源みなもとを、スネイプに調査されることだけは絶対に避さけたい。
「ハリー、ほかにはどういう科目を取っておるのだったかね?」スラグホーンが聞いた。
「闇やみの魔ま術じゅつに対する防ぼう衛えい術じゅつ、呪じゅ文もん学がく、変へん身しん術じゅつ、薬やく草そう学がく……」
「つまり、闇やみ祓ばらいに必要な科目のすべてか」スネイプがせせら笑いを浮かべて言った。
「ええ、まあ、それが僕のなりたいものです」ハリーは挑ちょう戦せん的てきに言った。
「それこそ偉大いだいな闇祓いになることだろう!」スラグホーンが太い声を響ひびかせた。
「あんた、闇祓いになるべきじゃないと思うな、ハリー」ルーナが唐突とうとつに言った。みんながルーナを見た。「闇祓いって、ロットファングの陰謀いんぼうの一部だよ。みんな知っていると思ったけどな。魔法省を内側から倒すために、闇の魔術と歯し槽そう膿のう漏ろうとか組み合わせて、いろいろやっているんだもン」
ハリーは吹ふき出して、蜂はち蜜みつ酒しゅを半分鼻はなから飲んでしまった。まったく、このためだけにでも、ルーナを連れてきた価値があった。咽むせて酒をこぼし、それでもニヤニヤしながらゴブレットから顔を上げたそのとき、ハリーは、さらに気分を盛もり上げるために仕組まれたかのようなものを目にした。ドラコ・マルフォイが、アーガス・フィルチに耳をつかまれ、こっちに引っ張ってこられる姿だ。