「そうか、まあ、フレッドの左っ尻ケツは置いといて――」
「何かおっしゃいましたかね?」
フレッドの声がして、双子ふたごが台所に入ってきた。
「あぁぁー、ジョージ、見ろよ。こいつらナイフなんぞ使ってるぜ。哀あわれじゃないか」
「あと二ヵ月ちょっとで、僕は十七歳だ」ロンが不ふ機き嫌げんに言った。
「そしたら、こんなの、魔法でできるんだ!」
「しかしながら、それまでは――」
ジョージが台所の椅い子すに座り、テーブルに足を載のせながら言った。
「俺おれたちはこうして高みの見物。君たちが正しいナイフの――うぉっとっと」
「おまえたちのせいだぞ!」
ロンは血の出た親指を舐なめながら怒った。
「いまに見てろ。十七歳になったら――」
「きっと、これまでその影すらなかった魔法の技で、俺おれたちをくらくらさせてくださるだろうよ」
フレッドが欠伸あくびした。
「ところで、ロナルドよ。これまで影すらなかった技と言えば」ジョージが言った。
「ジニーから聞いたが、何事だい? 君と若いレディで、名前は――情報に間違いがなければ――ラベンダー・ブラウンとか?」
ロンは微かすかにピンクに染そまったが、芽めキャベツに視線しせんを戻もどしたときの顔はまんざらでもなさそうだった。
「関係ないだろ」
「これはスマートな反撃はんげきで」フレッドが言った。
「そのスマートさをどう解かい釈しゃくすべきか、途方とほうに暮れるよ。いや、なに、我々が知りたかったのは……どうしてそんなことが起こったんだ?」
「どういう意味だ?」
「その女性は、事故か何かにあったのか?」
「えっ?」
「あー、いかにしてそれほどの脳のう障しょう害がいを受けたのか? あ、気をつけろ!」
ウィーズリーおばさんがちょうど台所に入ってきて、ロンが芽キャベツ用のナイフをフレッドに投げつけるところを目もく撃げきした。フレッドは面倒くさそうに杖つえを振って、それを紙飛行機に変えた。