「すまんね」おじさんは、ラジオのほうをぐいと首で指しながら言った。セレスティナの歌が大コーラスになっていた。「もうすぐ終わるから」
「大丈夫ですよ」ハリーはニヤッとした。「魔法省では忙しかったんですか?」
「実に」おじさんが言った。
「実績じっせきが上がっているなら忙しくてもかまわんのだがね。この二、三ヵ月の間に逮捕たいほが三件だが、本物の『死し喰くい人びと』が一件でもあったかどうか疑わしい――ハリー、これは他た言ごん無む用ようだよ」
おじさんは急に目が覚めたように、急いでつけ加えた。
「まだ、スタン・シャンパイクを拘束こうそくしてるんじゃないでしょうね?」ハリーが尋たずねた。
「残念ながら」おじさんが言った。「ダンブルドアがスタンのことで、スクリムジョールに直接抗議こうぎしようとしたのは知っているんだが……まあ、実際にスタンの面接をした者は全員、スタンが『死喰い人』なら、このみかんだってそうだという意見で一致いっちする……しかし、トップの連中は、何か進展しんてんがあると見せかけたい。『三件逮捕』と言えば『三件誤ご逮捕して釈しゃく放ほう』より聞こえがいい……くどいようだが、これもまた極秘ごくひでね……」
「何にも言いません」ハリーが言った。しばらくの間、ハリーは考えを整理しながら、どうやって切り出したものかと迷っていた。セレスティナ・ワーベックが「あなたの魔力がわたしのハートを盗んだ」というバラードを歌い出した。
「ウィーズリーおじさん、学校に出発するとき駅で僕がお話ししたこと、憶おぼえていらっしゃいますね?」
「ハリー、調べてみたよ」おじさんが即座そくざに答えた。
「私が出向いて、マルフォイ宅たくを捜索そうさくした。何も出てこなかった。壊こわれた物もまともな物も含めて、場違いな物は何もなかった」
「ええ、知っています。『日刊にっかん予よ言げん者しゃ』で、おじさんが捜索したことを読みました……でも、こんどはちょっと違うんです……そう、別のことです……」
そしてハリーは、立ち聞きしたマルフォイとスネイプの会話の内容を、おじさんにすべて話した。話しながら、ルーピンが少しこちらを向いて、一言も漏もらさずに聞いているのに気づいた。話し終わったとき、沈ちん黙もくが訪おとずれた。セレスティナの囁ささやくような歌声だけが聞こえた。
♪ああ、かわいそうなわたしのハート どこへ行ったの?
魔法にかかって わたしを離れたの……
「こうは思わないかね、ハリー」おじさんが言った。
「スネイプはただ、そういうふりを――」
「援助えんじょを申し出るふりをして、マルフォイの企たくらみを聞き出そうとした?」
ハリーは早口に言った。
「ええ、そうおっしゃるだろうと思いました。でも、僕たちにはどっちだか判断できないでしょう?」