「あいつ、何を考えてるんだか……」
ハリーはビクッと目を覚ました。ベッドの端はしに膨ふくれた靴下くつしたが置いてあるのが見えた。メガネをかけて振り向くと、小さな窓はほとんど一面、雪で覆おおわれ、窓の前のベッドには上半身を直角に起こしたロンがいた。太い金きん鎖ぐさりのような物を、まじまじと眺ながめている。
「それ、何だい?」ハリーが聞いた。
「ラベンダーから」ロンはむかついたように言った。
「こんな物、僕が使うと、あいつ本気でそう……」
目を凝こらしてよく見たとたん、ハリーは大声で笑い出した。鎖くさりから大きな金文字がぶら下がっている。
「いいねえ」ハリーが言った。
「粋いきだよ。絶対首にかけるべきだ。フレッドとジョージの前で」
「あいつらに言ったら――」
ロンはペンダントを枕まくらの下に突っ込み、見えないようにした。
「僕――僕――僕は――」
「言葉がつっかえる?」ハリーはニヤニヤした。
「ばかなこと言うなよ。僕が言いつけると思うか?」
「だけどさ、僕がこんなものがほしいなんて、なんでそんなこと考えつくんだ?」
ロンはショック顔で、独ひとり言ごとのように疑問ぎもんをぶつけた。
「よく思い出してみろよ」ハリーが言った。
「うっかりそんなことを言わなかったか?『私の愛しいひと』っていう文字を首からぶら下げて人前に出たい、なんてさ」
「んー……僕たちあんまり話をしないんだ」ロンが言った。「だいたいが……」
「イチャイチャしてる」ハリーが引き取って言った。
「ああ、まあね」そう答えてから、ロンはちょっと迷いながら言った。
「ハーマイオニーは、ほんとにマクラーゲンとつき合ってるのか?」
「さあね」ハリーが言った。「スラグホーンのパーティで二人一いっ緒しょだったけど、そんなに上手くいかなかったと思うな」
ロンは少し元気になって、靴下くつしたの奥のほうを探った。