「大丈夫」
椅い子すから腰こしを半分浮かしていたルーピンのそばを通りながら、ハリーが言った。
「大丈夫」
ウィーズリーおじさんが何か言いかけたので、ハリーはまた言った。
「結構けっこう!」
スクリムジョールは身を引いてハリーを先に通し、裏うら口ぐちの戸から外に出した。
「庭を一回りして、それからパーシーと私はお暇いとまします。どうぞみなさん、続けてください!」
ハリーは中庭を横切り、雪に覆おおわれた草ぼうぼうのウィーズリー家の庭に向かった。スクリムジョールは足を少し引きずりながら並んで歩いた。この人が、闇やみ祓ばらい局きょくの局長だったことを、ハリーは知っていた。頑健がんけんで歴戦れきせんの傷きず痕あとがあるように見え、山やま高たか帽ぼうを持った肥ひ満まん体たいのファッジとは違っていた。
「きれいだ」
庭の垣根かきねのところで立ち止まり、雪に覆おおわれた芝生しばふや、何だかわからない草木を見渡しながら、スクリムジョールが言った。
「きれいだ」
ハリーは何も言わなかった。スクリムジョールが自分を見ているのはわかっていた。
「ずいぶん前から君に会いたかった」しばらくしてスクリムジョールが言った。
「そのことを知っていたかね?」
「いいえ」ハリーは本当のことを言った。
「実はそうなのだよ。ずいぶん前から。しかし、ダンブルドアが君をしっかり保ほ護ごしていてね」スクリムジョールが言った。
「当然だ。もちろん、当然だ。君はこれまでいろいろな目に遭あってきたし……とくに魔法省での出来事のあとだ……」
スクリムジョールはハリーが何か言うのを待っていたが、ハリーがその期待に応こたえなかったので、話を続けた。
「大だい臣じん職しょくに就ついて以来ずっと、君と話をする機会を望んでいたのだが、ダンブルドアが――いま言ったように、事じ情じょうはよくわかるのだが――それを妨さまたげていた」
ハリーはそれでも何も言わず、待っていた。
「噂うわさが飛び交っている!」スクリムジョールが言った。
「まあ、当然、こういう話には尾ひれがつくものだということは君も私も知っている……予言の囁ささやきだとか……君が『選ばれし者』だとか……」
話が核心かくしんに近づいてきた、とハリーは思った。スクリムジョールがここに来た理由だ。
「……ダンブルドアはこういうことについて、君と話し合ったのだろうね?」