ハリーがメガネをかけ直し、髪かみを撫なでつけていると、ロンのくるくる回る姿が見えた。ジニーも到とう着ちゃくし、三人並んでぞろぞろとマクゴナガル先生の事務室を出て、グリフィンドール塔とうに向かった。廊下ろうかを歩きながら、ハリーが窓から外を覗のぞくと、「隠かくれ穴あな」の庭より深い雪に覆おおわれた校庭の向こうに、太陽がすでに沈みかけていた。ハグリッドが小屋の前でバックビークに餌えさをやっている姿が、遠くに見えた。
「ボーブル玉飾たまかざり」
「太ふとった婦人レディ」にたどり着き、ロンが自信たっぷり合あい言葉ことばを唱となえた。婦人はいつもより顔色が優すぐれず、ロンの大声でビクッとした。
「いいえ」婦人が言った。
「『いいえ』って、どういうこと?」
「新しい合言葉があります。それに、お願いだから、叫さけばないで」
「だって、ずっといなかったのに、知るわけが――?」
「ハリー、ジニー!」
ハーマイオニーが急いでやってくるところだった。頬ほおをピンク色にして、オーバー、帽子ぼうし、手袋に身を固めていた。
「二時間ぐらい前に帰ってきたの。いま訪たずねてきたところよ。ハグリッドとバック――じゃない――ウィザウィングズを」ハーマイオニーは息を弾はずませながら言った。
「楽しいクリスマスだった?」
「ああ」ロンが即座そくざに答えた。「いろいろあったぜ。ルーファス・スクリム――」
「ハリー、あなたに渡すものがあるわ」
ハーマイオニーはロンには目もくれず、聞こえた素そ振ぶりも見せなかった。
「あ、ちょっと待って――合言葉ね。せっ節せい制」
「そのとおり」「太った婦人」は弱々しい声でそう言うと、抜け穴の扉とびらをパッと開けた。
「何かあったのかな?」ハリーが聞いた。
「どうやらクリスマスに不節制をしたみたいね」
ハーマイオニーは先に立って混み合った談だん話わ室しつに入りながら、呆あきれ顔で目をぐりぐりさせた。
「お友達のバイオレットと二人で、呪じゅ文もん学がくの教室のそばの『酔よっ払ぱらい修しゅう道どう士したち』の絵にあるワインを、クリスマスの間に全部飲んじゃったようよ。――それはそうと……」
ハーマイオニーはちょっとポケットを探って、羊よう皮ひ紙しの巻紙まきがみを取り出した。ダンブルドアの字が書いてある。
「よかった」
ハリーはすぐに巻紙を開いた。ダンブルドアの次の授じゅ業ぎょうの予定が、翌日よくじつの夜だと書いてあった。
「ダンブルドアに話すことが山ほどあるんだ――それに、君にも。腰掛こしかけようか――」